新国立劇場中劇場にて、1月18日(水)にミュージカル『わたしは真悟』を観てきました。

昨年から、神奈川を始め、地方公演を行ってきたミュージカルですが、東京公演は1月26日まで行われます。

楳図かずおさんの漫画が原作のこのミュージカルは、「ミュージカル」というくくりで話して良いのか迷う不思議な新感覚の舞台でした。

主演は、高畑充希さんと門脇麦さん。また、彼女たち以上に重要なのが、成河さん。他にも、大原櫻子さんや小関裕太さんといった、私にはなじみのある人たちが出演していました。そして、一番のお目当てはダンサーの碓井菜央ちゃん。

『わたしは真悟』は、音楽、映像、ダンサーや役者の演技と動き、照明、舞台装置など、何もかもが絡みあって、融合して、調和したかと思うと、離散して、また集まってきて収束する…。そんな舞台でした。破綻しそうに危ういバランスを見せながら、実はそれが緻密に計算された演出であることを、そこかしこに感じられる。終わった後は、「私は何も見たのか」と、呆然となってしまうような、観たことのない世界でした。

私にとっては、楳図かずおさんの絵や世界観そのものが怖いものなので、ロビーに展示されていた数々の絵からも目をそらしたくなってしまったほどです。舞台でも、分断されたモニターにピクセルのように映し出されるイラストや映像が、本当に怖くて、その内夢に出てきそうです(笑)これが「怖い」という感覚は、伝わりにくいものですが、私は「ハスの実」のような粒粒が苦手な軽度の「トライポフォビア」なので、なんとなく分かってもらえるかもしれません。

ダンスは、コンテンポラリーダンスとパントマイムが中心で、ジャズやバレエ要素はほとんどありません。動きの一つ一つに意味があるようなないような、何かの形を表していたり、感情を表していたり、記号的だったり。映像にもダンサーが現れますが、人のようで人でないような「形状」になっているので、人だとは一瞬気づきません。

歌は、基本的に透明なガラスを使って演奏しているような、美しいメロディなのですが、機械との不協和音を奏でるときもあり、合っていない感を出したまま(ある意味、美しいハーモニーを作るよりも難しそう)だったり、「ミュージカル」と聞いて想像していたような歌は少ないです。

その演奏を担っていたのが、Open Reel Ensembleというグループです。今回、初めて、このようなグループがあることを知りました。舞台の上手側に、常に見えている状態で演奏していたのですが、「オープンリール」というように、テープがぐるぐる回っているのが見える大きな機械が3台並んでいます。これがまた、レトロで不思議な感覚を生み出しており、工場の一部としていたり、時には、街の一部としていたりと、その在り方が場面ごとに変わります。衝撃的な演奏方法で、クライマックスをも盛り上げます。

役者陣では、やはり成河さんが精彩を放っていました。『真悟』としてロボットそのものの感情などを語っているのですが、舞台の端から端まで、上から下まで、素晴らしい身体能力で移動していました。成河さんは、『十二夜』でも印象に残っていたのですが、今回の『真悟』役は彼以外に誰かできる人がいるのだろうかというほどです。

高畑充希さんも門脇麦さんも、舞台では初めて拝見しましたが、お二人とも澄んだ美しい声をしていますね。門脇麦さんは、小学生の男の子「サトル」くんがぴったりでしたし、高畑充希さんは、小学生の子供から、大人になるときの表情の変化が素晴らしかったです。(この時のダンサー陣のフォーメーションも凄かった!)

大原櫻子さんは、なんというか、元気いっぱいの小学生の女の子にしか見えません(笑)イメージそのまんま。声も可愛い。

驚いたのは、小関裕太くんです。「たけてれ」やハンサムライブ、CMやドラマなどではたくさん見ていましたが、実際にそばでお芝居をしているのを見たのは初めてです(客席でのお芝居もあったので)。背も高くてとてもカッコいいのですが、「ロビン」というキモい役を爆発的に演じきっていました。ロビンときたら、本当にキモくて怖い!カーテンコールで、カッコいい小関裕太くんを見られてホッとしたほどです(笑)しかし、なんというか、ビジュアルがカッコいいかからこそできる役です。

碓井菜央ちゃんは、最近はダンサーとしてだけではなく、お芝居や歌でも活躍していて素晴らしいのですが、今回、とあるシーンがとっても可愛くて好きです。その可愛いシーン以外でも、強欲ババア(?)みたいなすごい役としても活躍していたり、いろんあ所に登場していて、ファンとしては嬉しい限りです。

また、ダンサーの加賀谷一肇さんのタップダンスが、少しですが見られたのも嬉しかったです!

この作品は、作品として自分の見たものを消化するのにもう少しかかりそうです。ですが、他にはない、希有なミュージカルだと思いますので、興味のある方は、ぜひご自分の目で確かめに行ってみてください。