Peach(ピーチ)航空を利用して、初めて、日帰り韓国旅行というのをしてしまいました(笑)
先月、20年ぶりの海外旅行、初めての韓国旅行に行ったばかりでなんですが、次回の渡韓までにどうしてももう一度エリザベートが観たくて、カレンダーとにらめっこしていたら、「3連休だね…ここで行ければ会社休まなくて済むね。でも13日の1回公演しかシクトート出ない。その前後も滞在するとなると、飛行機代も高いしホテル代もかかる…あれ?ピーチ使うと日帰りってできるの?それならなんとかなる?」
という逡巡を脳内で一瞬でして(笑)
さすがに、完全徹夜は年齢的にも体質的にも無理なので、空港にあるカプセルホテルを予約して、仮眠ができるようにもしましたが、それについては別記事にします。また、飛行機の中でも寝られるように、ノイズキャンセリング機能のあるイヤホンを超久しぶりに買いました。快適で軽く感動しましたが、それも別立ての記事で書きたいと思います。
キャスト
2019年1月13日 15:00開演(1公演のみ)
エリザベート:オク・ジュヒョン
トート:パク・ヒョンシク
ルキーニ:パク・カンヒョン
フランツ:ミン・ヨンギ
ルドルフ:ユン・ソホ
ゾフィー:イ・テウォン
(敬称略)
開場から着席
前が通路になっている8列目の下手側。ギリギリVIPなギリギリ見切れないギリギリ席。ここは、前の人が邪魔ということは、ほとんどないはず。でも、カテコの直後に、早々に帰る人に踏まれました(泣)早く帰りすぎ。まだ拍手してんのに。立って拍手している私と座席の間を通っていこうとする無謀さでした。それはともかく。
全体的な感想
ほぼ徹夜という無茶なスケジュールでも、行った甲斐がありました。観た直後から、意識が朦朧としていて(寝不足だからではなく)、ただ、「今見たものはなんだったのか」と頭の中で表現を反芻するので精一杯。どうやって電車に乗ったのかあまり覚えていません。危うく仁川空港第1ターミナルを通り過ぎて第2まで行ってしまうところでした。
前回見てからひと月半。長期公演とはいえ、この短期間に、役者がここまで変化するのを目にしたのは初めてです。
この10年、同じ人を中心に見てはいますが、そこそこの数のミュージカルやお芝居を見ていますし、相当な数の役者さんたちを見ている方ではないかと思うのです。
「前回見た時より上手くなった」
「前回はこれやってなかったよね!」
みたいなことはよくあることです。(りさ子の小説にもそんなシーンあった(笑))役者もダンサーも人間ですから、調子の良い悪いもあります。そういう日々の変化は、舞台をよく見る人なら当然のこととして受け止めるでしょう。
しかしながら、今回のヒョンシクさんのトート。あれは、なんだったのでしょう。いつから変わったのか、徐々に変わっていったのか、ある日突然、変わったのか。
動きが完全に変わったところは、照明にも影響するでしょうから、もちろん相談して変更したのでしょう。でも、「トート」という役の解釈そのものが、まったく別ものになったような、あの演技プランは、その日の考えとか気分によって変わるにしては変わりすぎです。
あの、12月に見たシクトートにはもう会えないのだとしたら、ちょっと寂しいですが、強行スケジュールで行って、こんなに凄いものを見せてもらえて、最高に幸せな気持ちです。
프롤로그(プロローグ)
また、あのトートが見られると思ってわくわくしながら、幕が上がるのを待っていました。
まず、ルキーニのパク・カンヒョンさんの迫力と狂気が増していたことに驚きましたが、このような変化なら、当然のようにあることでしょう。「エリーザベート!」の言い方も怪しさ満点でした。っていうか、気持ち悪すぎです(褒めてます)。
プロローグが始まり、ブリッジが降りてきて、いよいよシクトートの登場。
歩き方からすこし違和感がありました。
が、歌い始めたところで
「え・・・!!」
そこには、「あの」トートはいませんでした。
12月2日は、マチネとソワレの両方を見ましたが、その2公演では、以前書いたように、「エリザベートが違うので、トートの側も少し違った」という範疇の違いで、「マチネで見たあれをもう一度見たい」と思った箇所をソワレでも見られたわけです。
でも、今回は、このトートは、「死」としての居かた、舞台での在り方そのものが、まったく違います。話が進むにつれて、最初に感じた違和感は、徐々に大きくなっていきます。
どこか空虚な表情。エリザベートに執着してた感じが薄く、過去のことを話しているような感じ。これは、最後まで観て初めて納得しました。そして、「凄い!」と。
プロローグに、エリザベートを取り巻く人たちの亡霊はいるのに、なぜ、エリザベートの魂だけは、トートのそばにいないのか。これは前から思っていたことではありますが、エリザベートだけ、プロローグでは肖像画のみしか出てこない。
모두 반가워요(愛と死の輪舞)
綱渡りの綱から落ちたエリザベートを抱いて歩いてくるトート。
かなりの無表情。前回はもう少しだけ優しさが見えるカオでしたが、死を迎える人に死の接吻をするのがトートの仕事、みたいな事務的な感じ。夜中の廊下にあったら確実に逃げ出す、能面のように無表情。
エリザベートを台に横たえて、死の接吻を与えようとかなりの勢いで近づいて。本当に、唇が近づく瞬間に、はっとする。初めて感情を乱されたような。
無表情からの感情の乱れ。
このコントラストが明確になっていて、見ている側もはっとさせられました。
今しばらく、もう少し、この娘を見ていようか、というような、死の接吻までの時間を延期してやろうぐらいの歌い方で、トート自身シシィを愛すとはまだ思っていない感じ。
この時点で、「わ〜全然この前と違う」と思うと同時に、「これはどういうトート???」と、頭の中がぐるぐるしてきました。
신이시여 지키소서 우리 젊은 황제(皇帝の義務)
あんなことはあったけれど、きっちりお仕事します、みたいなトート。
前回見たときは、死の接吻と羽根で覆い隠すのが同時でしたが、死の接吻をきっちり見せた一瞬後に、羽根で覆い隠す。死の接吻の意味をしっかり知らしめる。
「これが「死」」
照明めっちゃ暗いですけども。
結婚式
エリザベートが人のものになったとたん、嫉妬心が爆発するトート。
たぶん、トートの初恋?(「死」にそんなものがあるのか分からないですけどそもそもトートの存在そのものがあるのかないのか、なわけですし)
마지막 춤(最後のダンス)
嫉妬心をむき出しにして激しくエリザベートに迫ってくる歌と舞いでした。エリザベートを奪いに行く感が凄まじく、キレッキレのダンス。
エリザベートが倒れたところへ覆いかぶさるのも、なんだか荒々しさが増しています。思わず「うっわ!」と心の中でつぶやいたほど(笑)
それでもなんだか、まだ、感情は抑え気味というか、荒々しさの中にも、あくまでも「死」という人智を超えた存在の気品を保っているというか。うーん言葉にするのがとても難しい。
トートダンサー
12月の初めころに、トートダンサーのお一人が体調不良で降板されたと公式サイトに載っていました。私が前回、つい目がいってしまった人かもしれません。なぜなら、前回気になった踊り方をする人が、今回はいなかったように思えるからです。
エリザベート、ゾフィー、そしてフランツ
フランツは、お初のミン・ヨンギさん。超ベテランの方で、歌もすごく上手いのですが、オペラ寄りの歌い方なのですね。個人的には、ソン・ジュノさんの方が好きかなあ。
그림자는 길어지고(闇が広がる)
エリザベートの娘が亡くなった時の闇広です。
トートが闇そのもの。「氷のような」を超えてドライアイスほどの冷たさ。前回は、歌声の先に暗雲が立ち込める感じだったのが、トート自身から闇が湧き出ていて、エリザベートの世界を暗闇で覆い尽くさんばかりの迫力。
ゾッとしました。
엘리자벳, 문을 열어주오(エリザベート、扉を開けておくれ)
エリザベートがフランツを拒絶した直後に、ベッドに座ったトートが回転舞台で現れるシーンですが。
ここも、全く様子が変わっていました。
ベッドに片ひざ立てて座っていても、姿勢良く座っていたと思うのですが(お行儀良いと思ったので)、今回は、ベッドの背もたれに寄りかかっていて、そのままベッドインするぐらいの姿勢ではないですか!
シクトートに一体何があったのか。
しかも、エリザベートの誘惑のしかたが、とても生々しい。
そして、美しさを最大限に放ってきている!暗闇の死なのに、美しさで輝いている。斜めにエリザベートに近づく顔は二次元か!!こんな三次元がいていいものか。
「そんなん、エリザベートも吸い込まれそう〜!」と思ったら、エリザベートがすごい勢いでトートを突き飛ばします!
や、ほんとに。
すごい勢いで(笑)
すごく怖い顔で(笑)
全力で拒まれたトートの顔、大好きすぎます。邪悪さマシマシ。本当に、あと少しでエリザベートを手に入れられそうだったのに。
나는 나만의 것(Reprise)(私だけに)
あっという間に一幕の終わりです。
それにしても、この時のエリザベートは光り輝いていて本当に美しい。その向こうで闇の中から語りかける(ように歌う)トートとの対比をこんなに感じるとは。
まあ、フランツもいますが(笑)
また長くなってしまったので、一幕でいったん終わります。