2月7日から10日まで、韓国に行ってきました。SNSに写真をアップしていたら、香港人の友達が「まだ、韓国にいるのか?また、韓国にいるのか?」と聞いてきて爆笑(笑)すみません、「また」ですね。なにせ2週間前ですから。前回の記録も、まだ全部書けていません…。

しかし、先に「スリル・ミー」のことを書いておきたい!前回の記録はここ。

「韓国版ミュージカル『スリル・ミー(쓰릴 미)』20200124 マチネ」

韓国版ミュージカル『スリル・ミー(쓰릴 미)』20200124 マチネ

前回、当初予定の「私」役が病気で降板したため、たまたま、偶然、なんの気なしに見たこのペアの「私」役にうっかり心を持っていかれた気がして、「これは確認しないとね!」と、今回3回見てしまいまして。

今回の旅は、パク・ガンヒョンさんの「笑う男」を見る旅だったはずで、それ以外は予定入れてないから、雑貨屋巡りとかしちゃおうかなと思っていたのも束の間、いつも通りに忙しくマチマチソワマチソワすることになってしまいました。「笑う男」ももちろん堪能しましたが、まずは「スリル・ミー」の記録から!

YES24ステージ 2館(예스24스테이지 2관)

ここに通い詰めることになろうとは。今回は、忠武路駅に泊まったので(それについてもいずれ書きます)、4号線で1本で行けて便利でした。南部ターミナル駅へ行く3号線も通っていて、芸術の殿堂と大学路に行く予定の今回の旅では、ぴったりの場所でした。

2回目の「スリル・ミー」観劇なので、MDブースにて、「Thriller Card」(スタンプカード)をもらいます。「ミスト」では初回観劇からスタンプカードをもらえたので、ここは公演によって違うのですね。「2回目ですか?」と聞かれたので、「2回目です」と言って、前回のチケットも見せると、今回と前回のチケットにスタンプもらい済みであることを示すスタンプを押して、スタンプカードにも「スリル・ミー」にちなんだ可愛いスタンプを押してくれました。

それから、前回はそこまでハマると思っていなかったので買わなかった「フォトブック」も購入。これは、パンフレットとは別で、ポスター撮影時の各俳優の写真と、このフォトブック用の写真、彼と私のペアの写真などが満載でした。サイズが大きい上に紙が分厚すぎて手をザックリ切りそうです(笑)個々の俳優さんにハマらなければパンフレットだけでいいと思いますが、俳優さんにハマったが最後、必須アイテムです!

キャスト

2020年2月8日 15:00開演

나(私、ネイサン):김우석(キム・ウソク)
그(彼、リチャード):노윤(ノ・ユン)
ピアニスト:김동빈(キム・ドンビン)
(敬称略)

全部で4回観た中で、唯一ピアニストが違う日でした。個人的には、このキム・ドンビンさんのピアノの方が好きでした。ドラマチック過ぎず、それでいて静かすぎるわけでもなく、役者の呼吸にものすごく合わせてくる感じの演奏で、一人でオーケストラのような緩急のある気持ちの良い演奏でした。もう一人のピアニストさんも良いのですが、若干盛り上がりすぎる感じがするときがあり、演奏するときの動きも大きいので、暗いところにいるとはいえ、その動きがときどき邪魔になることが…。

イ・ヘジュンさんの「彼」も見てみたかったのですが、スケジュールの都合で見ることができず、残念でした。

座席

前回は、3列目のセンターで、終始見上げる態勢になって近すぎたので、今回は少し後ろのG列にしました。下手の一番端(劇場で端にいること多し)。壁によりかかれて便利でした(笑)

役者が上手の端にいくと、ちょっと遠いですが、肉眼で見える距離です。近視なので普段は眼鏡ですが、観劇のときは眼鏡はいろいろ邪魔になるので、度の強いコンタクトをしていきます。

感想

1月に見た時は、「こういう感じか」という感じ(感じ多すぎ)で、ブログにも書いたように、カーテンコールもあっさりしていましたが、この日は素晴らしかった!!スタンディングオベーションでした!やはりあの時は「まあまあ」な感じだったのだ。確かめに来て良かった!

もうなんか、彼と私とピアノの息がピッタリで、「내 앉경/기다려」で、電話をかけて話しては同時に切る、というのを3回やるのですが、受話器を置くタイミングがピッタリ!同時!ほとんど同時でもほんの少しずれたりするのですが、2つの受話器が置かれたことが分からないほどぴったり重なっていました。

1月は、ウソク私の「現在」と19歳の時の違いがあまり分からなかったのですが、今回は違いました。第一声を発した瞬間、「え!そんな声だったっけ?」と思ったほど。たった2週間ですが変わるものですね…。考えてみれば、日本で2週間以上上演される舞台ってそうは多くないから、その変化が起こる前に、たいていの舞台は終わってしまうのかもしれません。

これを見た後に、プレスコール時の映像を見ると、だいぶ違和感があります。基本的的には変わっていませんが、演技力と歌唱力がだいぶ上がっています。役の深みが増してるというか。プレスコールの場合、妙な緊張感もありそうですしね。

最初の刑務所のシーンから、19歳のバードウオッチングのシーンに移ると、「彼が帰ってきてこんなに無邪気な笑顔で喜んでるのに」と、そこからもう悲しくなります。ク・ジュンモさんの「彼」も見た後でノ・ユンさんの「彼」を振り返ると、この彼は、放っておいても、じきに自ら破滅しそうだなということ。「私」には知られたくなかったことまでウザい弟がペラペラ喋ったのを知ったことから、「私」に対するハッタリが酷くなる様子。

そんな彼の様子には気づかない「私」。他の女の子と遊んでることでやきもちを焼き、自分だけは「彼」のことを理解できてると思い込んでしまっていた「私」が、とくに親の愛に飢えてるわけでもないお坊ちゃんなのに、「待て」のまま焦らされ続けた結果、ああなるのも無理はないというか。

「彼」が煙草ケースから1本煙草を取り出してくわえたのを見て、ジャケットのポケットからサッとマッチを取り出して渡す「私」ですが、「彼」はそのマッチを受け取るも使わず、自分のZIPPOを出して火をつけます。その時のウソク私が、捨てられた子犬のような目を一瞬するのです。それを「彼」は見ていない。

そんなこんなで、久しぶりにあったのに、邪険にされまくった「私」が「彼」と8時に会う約束を取り付けて、「8時だね」と、少しウキウキして帰ろうと彼に背を向けて下手方向に歩き始めた時、その手首を掴んで、くるっとウソク私を回転させて、その反動を使ってキスするのが、ノユン彼。びっくりして小さく震えるウソク私。

「어때? 행복해?(どうだ?幸せだろ?)」

とノユン彼に聞かれて、うっとりしているウソク私が本当に可愛い。指先で唇を軽く押さえるのも女の子みたいな。捨てられた子犬から、一気に拾われた子犬。直後に歌えるのが凄い(笑)

そして、放火シーン。飛んで来る火の粉を振り払う仕草がシンクロする「彼」と「私」。怖がる「私」を「자기」(ベイビーとか親しい人を呼ぶ呼び方だそうです)と呼んで、連帯感を感じさせる姑息な「彼」。「자기야라고 불러주는 진짜 오랜만이다.」(자기と呼んでくれるのは、本当に久しぶりだね)と言うウソク私は、素直に嬉しそう。なのに、また、それを小馬鹿にするノユン彼は、大人ぶってるけれど破滅的で、だからこそ、そんな雰囲気の「彼」にどんどん惹かれていく「私」の説得力があります。

彼に「お願いしろ」と言われて、膝まずきながら、「야~~」と言うんですけど、ウソク私のその言い方がかわいすぎてヤバいです。ちょっと聞いたことない「やー」です。

「彼」は、おそらくゲイというわけではなく、そもそも、人生そのものが上手くいかなくなってるために、自分の言うことを聞いてくれる唯一の存在の「私」を、単に利用しているだけといった様子。とくに「私」を好きなわけでもなく。

「契約書」のシーン。下手側にデスクとタイプライターがあるので、契約書を打ってる時は、メガネのウソク私がタイプしている姿を指先まで見ることができるので、目が釘付けになるんですよ!(強調)

ナイフを手に取ると、すぐに「私」に向かってまっすぐ突き出すノユン彼。ちょっと引き気味になるウソク私は、「手を出せ」と言われて、両手を下に下ろしたまま、両方ともギュッと握ります。ノユン彼に強く言われて、ようやく右手だけ、少し開いて差し出したところ、人差し指をピッと切られます。血でサインをして、元の位置に戻った後、ノユン彼が自分の鳩尾のあたりで、自らの指を切りますが、その瞬間、ウソク彼は一瞬顔を逸らして、痛そうな所を見ないようにします。これが、ク・ジュンモ彼との時はまったく違うので、やはり別の組み合わせも見られて良かったと思うわけです。

続いて、「盗み」をしてみるも、まったく満たされない「彼」。次々と犯罪に付き合わされるのに、自分の要求を満たしてくれない「彼」に苛立ち、「私」の怒りが最高潮に。「こんな契約書ならいらない!」と破こうとしますが、ノユン彼が相手の時は、「この契約書のためだ」と契約書を胸ポケットから取り出す時は、すでに正面を向いていて、正面を向いたまま、契約書を取り出して破こうとします。ここも、ク・ジュンモ彼相手の時は、間が違いました。

そのまま「Thrill Me」を歌いながら、お互いにジャケットを脱いで床に叩きつけ、さらに、ベストも乱暴に脱いで床に叩きつけます。この時はもう、だいぶ「私」がリードしていて、「彼」を階段の方に突き飛ばして押し倒すように迫ります。「そんなに??」というほど突き飛ばすので、「彼」も半分びっくりしている感じです。この後、下手側でベストを着て、ジャケットを着て、袖を直したりしているウソク彼の手がまた可愛くて目が離せなくなるのです。

そして、殺人へと向かう二人。ウソク私の場合は、殺人の話が出た頃は、本当に怖がっていて、わざと捕まるように仕向けたのは、おそらく、死体を捨てに行かされた時ではないかと思いました。この殺人が発覚しなければ、次はおそらく「彼」の弟になり、それを「私」はずっと手伝い続けることになりそうだから。

この辺りで、「彼」が煙草を吸おうとするのを「私」が止めるのですが、「彼」は煙草をしまうふりをしながら、「私」に近づき、煙草ケースを「私」に渡すも、持ってた煙草を「私」の頬に叩きつけます。この時、なぜかウソク私が、この煙草を拾っちゃったのです。ちょうど手のところに落ちてきたのだったか忘れましたが、すぐ、監獄(というか裁判所?)のシーンになり、両手を組むので(捕まってる時は、手錠をかけられているということを表すために、両手を組んでいます)、ぺぺぺと手から煙草を落としてるのが可愛かったです(笑)(この時のことを、退勤挨拶のときに聞かれていました。)

この後、捕まるまでの「彼」の「私」への態度が本当に酷い。「私」がすがってくるのを突き飛ばし、突き放し、「変態」呼ばわり。これでよく嫌いにならないなと。この時のウソク私の絶望感ときたら。同時に、だからこそ、「証拠を残してきておいて正解だった」と思っている風でもあるのです。「彼」を目の前にして、別のことに思いが及んでいるかんじ。

そうして、監獄で「彼」に全てを打ち明け、「이건 정말 미친 짓이야!!」と罵られ「내가 지금 협박하고 있니?」と言うときの、本当にそんなつもりはないのに、そう受け止められて悲しいし寂しいみたいな言い方が切ない。「彼」のことしか見ていない「私」と、自分のことしか考えていない「彼」の対比が鮮明です。

現在の「私」に戻り、裁判官(声のみ)と話している最中に、監獄で「彼」が座っていたところに目をやり、思いを馳せるウソク私。「あなたは自由です」と告げられたときの「自由」という言葉の重み。外から差し込む明かり。もう「彼」はこの世にはいないのに、自分だけ生きている意味。

静かに、19歳のあの時、彼が帰ってきた瞬間の記憶に戻る「私」。あの時、あの瞬間から変わってしまった、変えてしまった「彼」の未来。手を伸ばしても、「彼」を捕まえることはできない。

カーテンコール

「いやあ、良かった!」と思ったら、段差のある席より後ろあたりの席の人たちがスタンデイングオベーション。それも頷ける、緊張感あふれる舞台でした。改めて見にきたかいがありました。

退勤挨拶

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マイクテストの様子