さて、いよいよシクトートソウル公演千秋楽日です!なぜ、急にこんなに頑張って韓国に通ってるのか自分でもよくわかりません(笑)去年までパスポートも持っていなかったし、他の人にハマっても、韓国までは行ったことがなかったのに。ファンミーティングとかではなくて、大好きなミュージカルの舞台だった、ということが大きいです。

好きな役者が、役を演じているのを目の前で生で観られる、しかも、大好きなエリザベートのこれまた大好きな役「トート」を観られるというのが。

Solos Kitchen ソロズキッチン

いつも通り、少し早めに劇場に行きますが、またカフェごはんなのもなあ…と思いながら、梨泰院から漢江鎮まで歩くことにしましたが、食べたいものがない。

そうこうしてるうちに劇場に着いちゃったので、サイドの通路のところとかの写真を撮っていたのですが、ふと、1階の一番奥が、温室テラスみたいになっていて、ごはんが食べられるようになっている。よく見ると、お弁当屋さんでした。廊下のところにも椅子と机があって、注文したお弁当をそこで食べられるようになってるんですね。一人メシにちょうど良い!

メニュー、ジャパニーズスタイルというのが半分くらいあって、店員の男性も日本語で注文を受け付けてくれました。ここはチキンナゲット弁当を注文。想像してたナゲットというより、唐揚げです。すごいボリュームで、美味しかったのですが食べ切れませんでした(笑)

それではマチネに向かいます。

キャスト

2019年1月27日 14:00開演

エリザベート:オク・ジュヒョン
トート:パク・ヒョンシク
ルキーニ:カン・ホンソク
フランツ:ソン・ジュンホ
ルドルフ:ユン・ソホ
ゾフィー:イ・テウォン
(敬称略)

開場から着席

今回は、13日に座った席と正反対側。前が通路になっている8列の上手、ギリギリVIP席。正面ははっきり言って舞台の枠というか柱です(笑)前回が下手のギリギリVIP席で、いつでもギリギリギリギリ。

最初、右隣に咳しまくりの風邪ひいたおばちゃんとその友人が座ったので、慌てて私がマスクをしたのですが、開演間近に若い女性二人組が来て、「そこは私たちの席ですが?」と。すごくわかりやすい席だと思うのですが、そこを間違えるとは、そもそもどこだったのでしょう。

全体的な感想

余計なものを、一切削ぎ落としたようなシクトートでした。最初の頃と比べると、演技がとても洗練されました。大げさなマイムの助けを借りなくても、自然と出てくる動きのみで構成されていて、「その台詞のときにこれをする」というよりも、「この台詞や感情だから、この動きになる」という感じ。

13日に見た時とも、これまた違っていて、どれだけ進化すれば気がすむのでしょう。変化がすごくてこちらが追いついていけません。これ、見た日によって、シクトートの印象がまったく違うので、人によって、評価も全然変わってくるのではないかと思います。初期に劇評がいくつか出ましたが、その人たちが見たトートはもういませんよ、と言いたいです。

そしてこれが、ソワレとも違ったので、もう大きく深いため息をつくしかありません。お客さんをおいていかないで(笑)

ていうか、あれは共演者、とくにエリザベートも大変だったのではないかと(笑)人間だから、調子の良い悪いはあると思いますが、そういうレベルじゃない「相手が違う」ぐらいの変わりようですから。

例えば、オク・ジュヒョンさんなんかは、何年もエリザベートをやっていて、多くのお客さんがオク・ジュヒョンさんのエリザベートを見たいと思って来てくれることを知っているからこそ(チケットの売れ行きも全然違うし)、毎回なるべく同じ状態の(といっても相手が変われば変わりますが)最高コンディションで、なるべくニュートラルで臨んでる感じがするのです。

「変わらない」ものを見せ続けることはむしろ大変で、実は前回よりも良くないと「変わらずに良かった」とは思われないと思うのですが(以前、エリザベートとレベッカを同時期に演じていた時のインタビューを日本のBSの番組で見ましたが、超人か!と思いました(笑))、一方で、まだまだ自由に変わっていけるシクトートを相手にどう感じられたのか、ぜひうかがってみたいところです。

프롤로그(プロローグ)

初めてのカン・ホンソクさんのルキーニです。

いやあ、しょっぱなから頭おかしすぎですね!!!(笑)そして終始頭おかしい(ほめてます)アクが強すぎる気もしますが、ものすごく実力のある方なんだろうなというのが全身から感じられます。

そして、よく動くし関節が柔らかい!声も壁が振動してそれが伝わってくるほどの凄い声量です。

これで、ルキーニは、コンプリートしました。やっぱり、一番好きなのはイ・ジフンさんのルキーニです。

亡霊たちのダンスの間に曲の調子が変わって、鉄橋が降りてくると、もうワクワクがとまりません。そして、ルキーニの「죽음!」

上手の端からだと、最初に鉄橋の手すり(というかロープ状の手すりが何本か張ってある)にかけた指先から見えたのですが、優雅で優美でひらひらのマントのレースの流れるような曲線と合わせて、美しすぎるシルエットで登場です。

エリザベートの肖像画を見上げているトートは何を思っているのでしょうか。そう思わせる背中です。そして、亡霊たちに混じってエリザベートの名を叫ぶ。その名を呼ぶことの意味は。

13日に見たときは、短めの髪でもオールバックでしたが、今回は、髪を左寄りで分けて、左は後ろに流して、右は下ろしていました。シルバーなのは変わらず。どちらの髪型でも素敵ですが、最後のシーンで着てくる白い衣装には、前髪を下ろした髪型の方が似合ってると思いました。

愛と死の輪舞

綱から落ちたエリザベートを抱えて表れるトート。ここ、歩いてると思ってましたが、歩いていたのは最後の数歩で、回転舞台で滑るように出てきてました。

死の接吻をしようとして、ハッとなる瞬間、本当に好きです。ものすごく義務的な無表情からの彗星が小惑星に追突したかのような衝撃の受け方。

そして愛と死の輪舞は、上手側を向いて歌うことが多いので、下手より表情がよく見えます。というか、音響が、下手側は少し弱い気がしましたが、真反対の上手側に座ってみて、上手側の方が聴きやすいと思いました。これは、会場や演目によって変わるとは思いますが。

ここも、とても表情豊かで、歌もとろけるような甘さがあります。エリザベートと離れていくときも、すごく名残惜しそうな顔。

신이시여 지키소서 우리 젊은 황제(皇帝の義務)

母の必死の訴えにも関わらず、処刑される男。その後ろで、徐々に黒い羽根を広げてゆき、ついには死の接吻を与える。

このシーン、かなり好きです。立ち姿が恐ろしく美しい…。

結婚式

ここは毎回、この絵に描いたような悪魔の笑い方をするのって大変そうと思ってしまいます(笑)ロープにつかまりながらの仰け反り方もすごかったです。笑い終わりに含み笑いみたいな声に変わるところが萌えポイントです。

마지막 춤(最後のダンス)

鉄橋の真ん中あたりから、ものすごく紳士な風情で、「私と踊りませんか?」的に手を差し出すシクトートの手を、吸い寄せられるように取ろうとするも、寸前で拒否するエリザベート!

小さくため息をつきながら、残された自分の手をギュッと握り、橋を降りてきて・・・からの、超激しくも優雅な最後のダンス。なんか、毎回思いますが、オク・ジュヒョンさんが相手の時の方が、エリザベートとの距離が近いというか遠慮がない感じがします。気のせいかもしれませんが(笑)

너의 선택이 과연 진심일까.

の선택のところで、フランツを顎と腕で示して、「あんなのと!ありえないだろ!はっ!」みたいな顔をするのがたまりません(笑)

トートダンサー

このカンパニーのトートダンサーの皆さん、ほんとに好きです。

日本だと、トートダンサーさんたち個別に公演で見たりしてることが多いので見分けがつきますが、最初からトートダンサーメイクされてると、キャスト表見ても、個別に認識するのはちょっと難しいですが(笑)

なんなら、トートよりも出ずっぱりですしね。ダンスがめちゃめちゃカッコいいです。

エリザベート、ゾフィー、そしてフランツ

ゾフィーはダブルキャストのはずですが、イ・テウォンさんしか当たりません(笑)素晴らしいので、全然構いませんが。

フランツがソン・ジュンホさんだと、マザコンっぷりが似合ってて、エリザベートよりもお母さんを取っちゃう感じがよく分かります。

ジュンホさんは、しっかり「エリ「ザ」ベート」と発音するのが、いつも耳に心地よくて好きです。

그림자는 길어지고(闇が広がる)

今まで、顔の表情とかマイムに集中しすぎてて、衣装にまで細かく目が行かなかったのですが、ようやく衣装にまで目がいく余裕が出てきましたよ(笑)

と言うか、オペラグラスを新調したのです!!

これまでは、VixenのSaqrasを何年も愛用してきたのですが、3回エリザベートを見て「ちょっと暗い」と感じていたのです。エリザベートの照明自体が、全体的に暗めなのですが、トートの場面は特に暗いじゃないですか(笑)それで、Saqrasを買ってから何年か経ってるのだから、もう少し見やすいオペラグラスが出ていてもおかしくないよな?と探してみたところ、2018年に発売されたばかりのケンコーのウルトラビューHの6倍が、スペック的に見て、Saqrasより明るく視野も広そうです。もちろんSaqrasより少し重く大きくなりますが、お値段はかなりお安い。後悔しない観劇をしたいのですぐさま注文。結果、買って大正解でした!

見やすい!!暗い照明でも、肉眼で見ているのに近い明るさのまま、レンズ越しにも見えます。ですから、「あ、ここからこの衣装に変わってたのね」とかにまで目がいきましたし、「足元そんな風にしてたのね」とかまでレンズ越しで確認できたのです。

ここはゆっくり歌い上げる闇広ですが、最後の
세상에 종말, 그 끝에 서있다.
の歌い方がとても好きで、最後の아~で伸ばすところは毎回聴き惚れてしまいます。

엘리자벳, 문을 열어주오(エリザベート、扉を開けておくれ)

13日に見た時よりは、また姿勢良くベッドに座っていましたが、見るたびに色気が増してるのはヤバいですね(なにが)。

それでも、今回は少し紳士っぽくエリザベートに迫ります。13日ほど強くはエリザベートに突き飛ばされてませんでしたし(笑)その後の表情は、悔しそうとか悪そうというより、駄々っ子の言いぶんを「やれやれ」と聞いてやってるみたいな感じでした。

ここで、ベッドから起き上がるシクトート、ひざ(?)がポキ!っ鳴るんです(笑)か、かわいい(°▽°)

나는 나만의 것(Reprise)(私だけに)

一幕最後は、鏡になるスクリーンの向こうにトートが現れますが、新調したオペラグラスのおかげで、これもよく見えました。

키치(キッチュ)

盛り上がりがすごい。そして、やっぱりルキーニの関節が柔らかい感じ(笑)

내가 춤추고 싶을 때(私が踊る時)

舞台奥にある銅像の後ろから、銅像の土台ごとゆっくり回転して現れるのですが、上手端席だと、スタンバってる服の裾がヒラッと少し見えるんですが、もうわくわくしちゃうんですよ。端席だと、いろいろナナメからしか見えないとか、音響に偏りがあるとか、マイナスなことも多いのですが、こういう楽しみがあるのですよね。ルドルフとの闇広の時も、紋章の裏にいる足が見えますし。

銅像から降りてくる時もキザっちい今回のシクトート。またこのシクトートのビジュアルにぴったりなんですわ。あらゆるキザポーズが。

엄마 어디 있어요(ママ、どこにいるの)

この回のちっちゃすぎる子ルドルフ、ほんとに儚げでかわいいです。

黒い羽根が降りてくるのが窓の外に映ってからのトートの登場の仕方が好きすぎて、脳内エンドレスリピートです。ベッドの背もたれの裏から現れた瞬間の顔が、ほんとに少女漫画。樹なつみさんの「花咲ける青少年」とか「ヴァムピール」とか、そこいらへんから飛び出してきたみたいな。

今回のシクトートは、ルドルフのこの先を予感させるのに十分な、静かな恐ろしさを秘めていました。

내숭 따윈 집어치워요(マダム・ヴォルフのコレクション)

毎回全然違うのが、このシーンでのシクトートの居かたです。ここでの居かたによって、その回のシクトートがどんなトートなのかが分かると言ってもいいと思うほど。

今回は、居た時間的にも一番短かったような。ただ、成り行きを見て(見守ってはいない)「そうなるわけね」みたいな表情でいるだけで、何かマイムをしたりもしませんでした。

전염병(伝染病、最後のチャンス)

今回は、エリザベートの服を脱がそうとはしていませんでした(笑)

後ろを向いて、ハットを取ってコートを脱ぐときに、ハットを取りながら後ろ頭をサッと整えていたのがツボでした。それにしても、つくづくこのシーンって難しいんじゃないかと。

それまでは、エリザベート(とルドルフ)にしかトートは見えない感じだったのに、ここは医者に扮して入ってきて、お付きの人にも見えてるわけで、肉体を持った人ととして登場しているわけで。(もしくは、お付きの人の死もエリザベートのすぐ後だったのかも?死が近いと見えるみたいな)

그림자는 길어지고(Reprise)(闇が広がる)

フランツとルドルフが口論してルドルフがいったん出て行き、外に出てきたところで、紋章がゆっくりと上がり陸橋の上にいるトートが現れますが、ここも口論の間も紋章の後ろにいるトートの足は見えてまして。どんな登場の仕方をするのかな〜と思っていたら。

身体は後ろ向き、顔は横を向いて橋の手すりに軽く腰掛けていて、右手の人差し指で橋の手すりの表面を軽くなでてから、埃を落とすように指を軽くすりすりしながら立ち上がって、ゆっくりとルドルフを見る・・・。

前回よりキザい!!
そしてカッコいい!!

니가 어릴때 우리 다시 만날거란 그 약속.

のも、すごくルドルフに話しかけるように歌っている上に、그 약속の歌い方も変わっていて、おお!っとなりました。

やっぱり、前回見たときから、腕を広げなくなっていたのかなあと思うくらい、ルドルフから自然にトートに抱きつきに行ってました。前回はルドルフが前ならえ状態で、シクトートのわきにスボッと腕を差し込み行ってる感が強かったので(笑)それにしてもシクトートの貫禄が出てきたのか、ルドルフが以前にも増して迷子の仔犬みたいに見えます。

トートがルドルフを煽ることは煽るんですが、あくまでも、ルドルフが自ら決めたことといった風情で、この後ルドルフが革命家たちと破滅に向かう様子を、ただただ、指で時を刻むように軽く橋の手すりを触って見ているだけで。時々、ニヤッとするも、ほぼ無表情に近く。

そして、決定的瞬間に、堪えきれずに笑い出す。その様子はまさに悪魔。

죽음의 춤(マイヤーリンク 死の舞踏)

この直前、エリザベートに会いに行くルドルフが好きです。母の声が聞こえた瞬間の超嬉しそうな顔からの絶望。

そして現れるトート。ここは、お客さんに見せるショーの体裁だったんですね。

ルドルフへの死の接吻の勢いが激しかったです。その後、ゆっくりと息を吐き出し、魂の抜け殻を転がす顔も怖すぎて美しくてたまりません。前回はトートダンサーがルドルフをかかげてるときに、後ろに行ったトートは唇をぬぐっていましたが、今回はそれもなく!さらには、銃を持った手でお辞儀した後、銃口を吹くこともしませんでした!

これはカッコよかったからなくさないで欲しかったなあ。多分13日は過渡期でした。

ここのシーンはルドルフが死んだ瞬間から無音なのですが、この緊張感が毎回最高です。トートの足音だけがこだまする感じ。

추도곡(死の嘆き)

ここのオク・ジュヒョンさんのエリザベートは、半狂乱の悲しみの中にも美しさが輝いていて、見惚れてしまうのです。

エリザベートが死を懇願するとき顔を歪めているトートですが、その表情がまた、エリザベートが懇願すればするほど険しくなっていくのです。そして、エリザベートを拒絶するトート。愛されないならいらない。黒い感情が噴き出るようです。

질문들은 던져졌다(Reprise)(悪夢、暗殺)

この時、鉄橋は斜め上を向いて止まっていて、その途中にトートが現れるのですが、結構な高さがありますし、見てるよりもすごく斜めなのではないかと毎回ちょっとハラハラします。私が高所恐怖症だからというのもありますが。

フランツからエリザベートを奪うというより、自由にしてあげるというのが、俺様トート様なのですが、もう怒りは凄まじく、最後に雷鳴を轟かせる瞬間が本当にカッコよくてたまりません。

イ・ジフンさんのルキーニは、気づいたらナイフを持っていたけれど、頭がおかしいというよりは、自分の意思を持ってエリザベートを刺しに行く感じがします。

베일은 떨어지고(愛のテーマ)

魂だけになったエリザベートを迎えに来るトート。この時の純白の衣装姿は、Special Edition Programに載っています。トリプルキャストの中で、この場面がシクトートの写真なのは嬉しいです。

そしてやはり、死の接吻の後は、初期の頃の嬉しそうな感じは全くなく、最後の瞬間、淋しそうな顔をしていました。

カーテンコール

大歓声の中のカーテンコールです。シクトートの最終日だと分かっている人がほとんどでしたでしょうし。

最後のダンスのサビを歌い踊って最後のタメの部分。あまりの歓声に、感極まったシクトートは上を向いて必死に泣かないようにしてから(すでに泣いてましたが)、今までで一番長い間を置いてから、最後の一声を歌い上げました。(こういうのは、生オケじゃないとできないと思うのですよ。役者にオケが合わせてくれる。録音上演になる地方公演だとどんな感じになるんでしょうかね。)

もちろんオク・ジュヒョンさんへの拍手喝采もすごくて。大盛り上がり。

全員が出てきて、メインソングを歌い、オケにも拍手を送るとき、いつも以上にオケのメンバーにお辞儀をしてご挨拶していたシクトート。

幕が降りる寸前、オク・ジュヒョンさんがヒョンシクさんを引っ張ってセンターに寄せて、고마워(ありがとう)的なことを言い合ってたように見えました。(声までは聞こえない距離なので)

こうして、大満足のマチネは終わってしまいました。残すソウル公演は、あと1回のみ。