2018年12月2日に始まった私の韓国『エリザベート』観劇もとうとう最後の日を迎えました。友人や家族が驚くのも当然、自分でも驚いた突然の韓国通い(笑)
このあほなくらい詳細すぎる公演の感想を書き始めたのも、絶対に映像に残らない公演のため、後で自分で読んだ時に「そうだったそうだった」と、鮮明に記憶を蘇らせたいという思いから。昔の舞台の感想をたまに読み返すと、恐ろしいほど忘れていることに気づかされるので・・・。
20190413 マチネ
シクトート千秋楽のこの日、私的メインイベントはもちろんソワレですが、実はシン・ヨンスクさんとチョン・テグンさん(VIXX レオくん)のマチネも観てきました。イ・ジフンさんのルキーニも城南で観ておきたかったですし、ユン・ソホくんのルドルフの千秋楽でもあったので。
しかもこの回のエリザベートは、今まで見た中で一番席が空いていまして、かなり直前でも5列目6列目あたりが買えました。ニ幕キッチュでルキーニが入ってきた時に振り返りましたが、初めて1階後方に全然人がいない客席を見ました。もったいない!あと、ロビーでも客席でも、周りに日本の人がほとんどおらず、日本語がまったく聞こえてこなかったのも、光州以来です。
ですが、観に行けて良かったです!シンエリザを最後にもう一度見られたのも最高でしたし、シクトートとは全く違うテクトートがとても興味深かったですし、何より、イ・ジフンさんのルキーニとユンルドを見納めできて感激でした。
城南アートセンター(성남아트센터)から野塔駅(야탑역)へ
マチネが終わり、ソワレまでをどう過ごそうかと考えました。前日に行った、城南アートセンター1階にあるカフェに行くのもいいですが、2日間同じ所に行くのはつまらないので、とりあえず、二梅駅よりは栄えてそうな隣の野塔駅(야탑역)まで散歩してみることにしました。結局、隣の駅にも時間を過ごせそうなカフェがほとんどなかったので(汗)、来た道をただ戻るだけという寂しい結果になってしまいましたが。(パリバケットならありましたが、とても小さな店舗で、土曜日の午後ということもあり満席でした。)
それでも、その大通り沿いには「エリザベート」のバナーが要所要所に掲げられていたので、「こんなところにもあった!」とそれらを確認しながら撮影するのが目的の散歩になりました(笑)
往復40分もお散歩してしまい、疲れてこのままではソワレで寝てしまう!と、結局、1階のカフェに入り、3人分のジェラートを一人で食べて(なにせ午前中にチェーンのカフでサンドウィッチを食べたきり何も食べていなかったので)、いよいよソワレです。
キャスト
2019年4月13日 19:00開演
エリザベート:キム・ソヒョン
トート:パク・ヒョンシク
ルキーニ:パク・カンヒョン
フランツ:ソン・ジュンホ
ルドルフ:チェ・ウヒョク
ゾフィー:イ・テウォン
(敬称略)
キム・ソヒョンさんのエリザベートは、3月の大邱以来です。これで、ルドルフがユン・ソホくんだったら、12月2日に初めて「エリザベート」を見たときと同じキャストだったのですが。それでも、本当に最後かと思うと、いろいろと感慨深いです。この4か月半で、私の人生に多大なる影響を及ぼした作品ですから。(このブログを再開したという点においても)
開場から着席
シクトート千穐楽は、どうしてもこれ以上前の席が取れませんでした(あとでこれが幸運につながるわけですが)。上手ブロック11列センター寄り通路席。キム・ソヒョンさん、パク・カンヒョンさんなど、千穐楽を迎える人がほとんどでしたから、センター寄りで、遮るものが何もない通路席が取れたこと自体、奇跡でした(ちなみに城南は2日間ともYES24で取りました)。
さすがに、お客さんは多く、広すぎる会場なので満席とまではいきませんが、実質、見やすい席は満席と言って良いでしょう。マチネでまったく聞こえなかった日本語が、そこらじゅうから聞こえてきましたし、私の前の列には中国語を話している人たちがたくさんいました。
全体的な感想
この回はもう「どういう演技プラン」みたいなものはあまり関係なくて、キム・ソヒョンさんとヒョンシクさんのパワーゲームのようになっていました(笑)お互いの持てる力をぶつけ合いまくり、最後は力を出し切ったみたいな。シクトートがときどき泣きそうというか、感極まってるようなところもありましたし、エリザベートも同様にこれまでの通常の舞台と比べると、歌が前へ出過ぎなところが。でも、そういうのが見られるのが千穐楽ですから、それもひっくるめて感動して感激しました。
再演はあるでしょうけれども、まったく同じキャストということにはなりませんし、その時、役者も自分も健康で、何事もないという幸運な日を必ず迎えられるとも限りませんから。
프롤로그(プロローグ)
久しぶりに、上手(というかほぼセンター)から見る「エリザベート」が新鮮です。そして、オペラグラスは、このくらいの距離からの方がとてもきれいに見えます。
パク・カンヒョンさんのルキーニは、冒頭の「엘리~자벳~!!」というセリフの言い方が、毎回違っていて興味深かったです。そうして、亡霊たちが起き出してきて、エリザベートの銅像の周りを取り囲み、回る舞台上で歌い踊ります。すでになんか泣きそうです。ダブル、トリプルキャストの人たちはもちろん、このアンサンブルさんたちやトートダンサーズが本当に大好きでしたので。
そしてブリッジが徐々に降りてきて、エリザベートの肖像画に向かって舞台中空で止まり、トートがゆったりと登場。みぞおちあたりまで腕を上げながら、懐かしいにおいをその中に感じるかのように、ゆっくりと息を吸い込んでから吐き出します。もちろん髪型は昨日と同じ。髪を右寄りに分けて、左の前髪を多めに下ろしています。静かに歌い始め、エリザベートの肖像画に向かって愛おしそうに手を伸ばしながら、
난 그녀를 정말 사랑했어~
と歌いそっと右手を握ると、その手をゆっくりと下ろし、彼女の思い出、声や姿を思い出しているように肖像画を見つめたまま動きません。ルキーニに名を呼ばれて初めて、我に返ったように顔を左に向け、そのままゆっくりと振り向きます。
このあとの全員での엘리자벳!の嵐のような歌で、全身に鳥肌が。これが最後の曲かのようなパワーで、全員の気持ちが一体になって一気に押し寄せてきたからです。このカンパニー、かっこよすぎです。
愛と死の輪舞
綱渡りの綱から落ちたエリザベートを、華麗にお姫様抱っこして現れるシクトート。なんというか・・・やっぱり、キム・ソヒョンさんが一番軽いですよね(笑)なんだか特に今回は軽々と抱っこしているように見えたので。大きな人が続いたので(←)久しぶりのキムエリザがやけに小さく見えたのかもしれません。
エリザベートを台にそっと寝かせ、やはり優しく頭を支えてあげながら、その頭を自分の右ももにそっと乗せるシクトート。この時点から、紳士で貴公子な黄泉の帝王なのです。昼間にテクトートを見たせいか、余計に「紳士だ~」と思いました。なにせテクトートはもうちょっと獣(というか人外のもの)っぽかったので。
よく考えると、そもそもなぜここでエリザベートを抱っこしてくるのか、とか考え始めるといろいろ辻褄が合わなくなるので、そういうことは考えないようにして、美しいシクトートがエリザベートの唇を奪おうとすることに集中します。
トートの顔がエリザベートの顔の間近に迫るのと、エリザベートが束の間動けるようになって息を吸うのとが重なる瞬間、目を見開いて固まるシクトート。エリザベートが手を伸ばしてきたので、あわてて立ち上がり彼女から離れ、彼女の動きを再び封じ、「今のはいったい何だったのか」と自問自答するように歌い始めます。
너의 차가운 생명을 얻는 대신
너의 따스한 사랑을 더 느끼고 싶어
ここで自分の気持ちを確認して
내 안에서 네 꿈을 찾아~
と、エリザベートがトートに触れようとしていた手の周囲の空間を円を描くようになでるシクトート。エリザベートは再度動き出し、トートに向かって語りかけますが、その間にも家族がやってきて、上手袖にエリザベートを連れていきます。
シクトートは名残惜しそうにエリザベートを見送るも、次に会えるときを楽しみにしているようです。
신이시여 지키소서 우리 젊은 황제(皇帝の義務)
処刑を待つ男の後ろに不気味に立ち、黒い翼を徐々に広げていくシクトート。ゾフィーの一言からのフランツの命が下りたその瞬間、ひざまづいている男の左上からかがみこみ、死の接吻を与えます。右手の翼は右に広げたまま、左の翼で男と自分の姿を覆います。このシルエットが漫画のワンシーンのようにカッコいい。
ここ、テクトートは、右の翼を左肩の上方にあげて、身体全体で男の左側から襲いかかっていました。おお!と思いましたが、それもかっこよかったので、それぞれがカッコいいポーズを研究してやってるんだなあと。
結婚式
自分を愛してくれるようになったエリザベートと再会することを楽しみにしていたのにこの仕打ち。
他の男と「死が二人を分かつまで」などと誓って結婚式を挙げてしまうのですから、ちゃんちゃら可笑しい。そんなのを見せられたら、大声で笑ってしまうのも無理はないだろうと言わんばかりに教会中に響きわたるシクトートの笑い声。不安に思うも、他の人には聞こえていないようで、フランツにひしっとつかまるエリザベート。
마지막 춤(最後のダンス)
마지막 마지막 춤(泣)
フランツと踊ってはしゃいでいるエリザベートの元へ、平静を装って表れるシクトート。恭しくお辞儀をして、エリザベートに左手を差し出します。エリザベートは一瞬手を取ろうとしますが、トートにあまり近づかないうちに手を引っ込めてしまいます。やはり、キムエリザは、この時あまりトートに近づかないんですね。
その左手を固く握り締めてから、右手を大きく一振りして、死の天使を自分のそばに集合させるシクトート。
한 여잘 사랑하는 두 남자의
뻔하지만 새로운 이야기
「ひとりの女を愛するふたりの男、よくあることだが」って、トート様はそんなに男女の話をよく知っていらっしゃるのですか、と思わなくもない今日この頃。
最初は、自分のことをすっかり忘れてフランツを選んだエリザベートを責めていますが、それでも怒りを抑え気味にしているシクトート。徐々に激しい思いを抑えきれなくなり、エリザベートを文字通り振り回し押し倒し、思いのたけをぶつけて去っていきます。ぽかんとしているエリザベートとの対比に、シクトート様ちょっとかわいそう。しかも、本物の夫婦がエリザベートとフランツを演じているから、そちらの方がなんだかお似合いなんですよね(汗)
ここで実はいつもバレエ「白鳥の湖」の黒鳥登場シーンが思い浮かびます(男女の立場は逆ですが)。魅力全開で王子を誘惑する踊りを踊るあの黒鳥です。自分の魅力を踊りと歌とを駆使し全身で表すところがよく似ています。ひょっとするとそのシーンからインスパイアされているのかもしれませんね。作者が白鳥の湖をご存知ないわけないですし。
ところで、この最後のダンスの中で私が大好きだと書いていた手指の振り付けですが(文字では表現に限界があった)、トートダンサーのお一人カン・テソク氏が、ご自身のInstagramに開演前の気合い入れの様子を投稿してくださっていて、その振り付けを垣間見ることができるようになっています(歓喜!)정말 감사합니다.
トートダンサー
改めてトートダンサーの凄さについて。トートダンサーはダブルキャストではないですし、全公演出るわけじゃないですか。他のアンサンブルさんたちも凄いですが、トートダンサーは、もう本当に出ずっぱりなんですよ。
この後のエリザベートとゾフィーとフランツの人形劇みたいなシーンも、トートダンサーが2人上から操ってますし、宮廷、娼館、カフェなどなどどこにでも、死の影として潜んでいて。そしてほとんどの場合踊っている。体力どうなってるんでしょう。彼らの活躍あってこそ、トートがカッコよく見えるわけですし。本当に尊敬します。
그림자는 길어지고(闇が広がる)
エリザベートの娘の棺が死の天使たちによって運ばれている行くのを見たエリザベートは、人形劇の枠の中から飛び出してきて、必死で棺の後を追います。この演出で、それまで王家にがんじがらめにされていたエリザベートが、一歩そこから飛び出したということも表しているのかなと思いました。
舞台上手で悲しみに暮れているエリザベートのはるか頭上(舞台下手の中空)に表れるトート。
내가 널 안았던 순간
떨리던 니 숨결을 난 기억해
넌 내가 필요해
エリザベートに言い含めるように静かに歌いだすも、そのその声は地を揺るがすほどに大きく響いて、やがてあたりは漆黒の闇に包まれます。本当に、渾身の그림자는 길어지고で、「うおおおお!」という歓声というかどよめきが起こっていたほどです。本人も最後の余韻に気持ちが高ぶっている感じを受けました。
행복한 종말(退屈しのぎ カフェプレイオフ)
一転、カフェで革命家たちに紛れて、ほぼ新聞持ってるだけというシーン。
下手奥から、新聞を顔の前に掲げたままスタスタ歩いてくるときのシクトートの姿勢の良さと新聞を持ってる指先が毎回ツボです。皆が歌い踊ってる間、かなりグラグラ揺れている椅子とテーブルですが、それを感じさせないクールな様子を保っているのも。
歌が終わり、新聞をたたんでテーブルにばん!と置くと同時に立ち上がって姿を表し、ルキーニを睨みつけるその眼光の鋭さは何を意味しているのでしょうかね。今まではただカッコいいと思って見ていましたが。ここは完全に演出でそうなっているわけですが。
少し前に読んだチョン・ドンソクさんのインタビュー記事で、ドンソクさんはこのシーンには出たくないというようなことをおっしゃっていました。なるべく姿を表したくないと。何度も見てるうちに、その意味が分かるような気がしました。
それはともかく、黒いコート姿のシクトートがカッコいいことには違いありません。
엘리자벳, 문을 열어주오(エリザベート、扉を開けておくれ)
キム・ソヒョンさんのエリザベートと、ソン・ジュンホさんのフランツだと、このシーンの切なさが倍増です。(私が勝手に思ってるだけですが(笑))そして、久しぶりに上手側から見る、ベッドの上のシクトートです。
フランツに最後通告をし、苦しみで胸が張り裂けそうになっているエリザベートに、
엘리자벳
내 품에 안겨 편안히 눈을 감아
위로해 줄게~
ですよ。人のベッドに座って「腕の中で慰めてあげる」って何言っちゃってるんですかトート様、って感じですが、弱ってる時にこれほど美しい誘惑が来たらそれはもうふらふら行っちゃいますよ。トートの腕の動きに合わせて、意のままに動かされてしまうエリザベートも、ようやくゆっくり眠れるというような陶酔した表情です。
それでも、すんでのところで、トートの腕の中から逃げ出すエリザベート。今にもエリザベートを抱きしめようとしていたのに、急に空いた両腕の間に軽くため息をついてから腕を下ろし、苦々しい表情でベッドから降りるシクトート。なぜそれほど拒むのかと少し呆れ気味でエリザベートの言うことを聞いていたシクトートも、「あなたなんて必要ない」と言う言葉に怒りを露わにします。
나는 나만의 것(Reprise)(私だけに)
切ない歌声でエリザベートに語りかけるフランツ。扉が開いて、まばゆいばかりの美しさを纏ったエリザベートが登場し、フランツも観客も息をのむ中、大鏡の幕が降り、そこにトートが浮かび上がります。
エリザベートをつかもうと、手を伸ばすも届かないトート。目の前にいるフランツなど歯牙にも掛けない様子で、あくまでも、エリザベートは自分のものだとの思いを強くするシクトート。
思えば、初めて観た時もこの3人でした。そして、この3人で『エリザベート』の見納めとなるのだと思うと、寂しいというより不思議な気持ちです。12月に見たときは、シクトートの声量が若干負けてしまってるかなと思いましたが、今この時には、全くそんなことはなく、若干張り切りすぎのエリザベートの声にも負けていません。というか、このシーンでソン・ジュンホさんの声が押され気味という初めての経験をしました。
幕間
(終演後はすぐに帰るわけだし、今トイレに行かなくてもいいかな)と、席に座ったままiPhoneの電源をオンにしたところ、回線につながった瞬間公式ファンカフェの通知が飛び込んできました。ご本人の強い希望により、退勤時のご挨拶があるとのこと。にわかに周りがざわめき始め、前の列の人たちは友人同士で動線確認をしています。私は(トイレに行っておくんだった)と思いました(汗)
키치(キッチュ)
二幕の始まりです。
上手通路席なので、すぐ横をルキーニが駆け抜けていきます。そして、閉じられたオケピの上を歩き回ってキッチュを歌い上げるパク・カンヒョンさんのルキーニ。
マチネで見て、キッチュはやっぱり、客席との絡み方も含めてイ・ジフンさんのルキーニの歌い方が一番好きだなと思いました。お客さんとの距離感がちょうど良いんですよね。
パク・カンヒョンさんは玄関のドアの外にいる感じ、イ・ジフンさんは玄関のドアの内側に入ってはくるけど靴は脱がないみたいな。カン・ホンソクさんは土足でどかどか上がってくる感じ(ひどい 笑)。
내가 춤추고 싶을 때(私が踊る時)
この辺りから、キムエリザとシクトートの力のぶつかりあいが激化。
今にも飛び立たんとする鷲の銅像の足に、左腕を置き、銅像にもたれ気味に立って表れるシクトート。あくまで、自由を求めるエリザベートに本当の自由(つまり死)を与えられるのは自分だけだと言い張り、自分の持てる力を死の天使たちを駆使して誇示します。
エリザベートを舞台上手に追い詰めていくときのシクトートの手の動きや歩き方が、優雅で妖艶なのに合わせて、トートダンサーズのトートと一体化しているような動きも見事で、毎回見惚れてしまいます。
エリザベートとトートの話は平行線をたどったまま、ここでは終わりますが、二人の歌の迫力が凄まじく、ここでもスタンディングオベーション並みの拍手です。
엄마 어디 있어요(ママ、どこにいるの)
上手から見ると、窓の外に黒い羽根が落ちてきたその先からトートがスッと現れたように、きれいに見えます(下手からだと、若干ずれるので)。
ルドルフに「母親を呼んでも無駄だからやめろ」というのは、実は自分が、エリザベートを呼んでも一緒に来てくれないことに対しての八つ当たりのような。そもそもルドルフのもとに現れたのも、ルドルフが母親を呼んでいたからではないかと思いました。
ルドルフに近づいても、今すぐ黄泉の国につれていくわけではないので、確認だけしてすぐ姿を消そうとしたところ、ルドルフが「行かないで」と触れてきたため、エリザベートと同じ血が流れているのを感じたような。そこで、皇子に対する最低限の礼を払うことにしてお辞儀をした。現れたときには、突然横に座ってるわけですから。シクトートの表情と礼の仕方で、ここまで想像させてしまう力がすごいなと改めて思います。
내숭 따윈 집어치워요(マダム・ヴォルフのコレクション)
この回のシクトートは、わりとあっさりした態度でここにいました。
いつの間にか現れ、もう誰も乗っていないメリーゴーランド状のポール台のひとつにサッと上り、静かに両腕を広げて、その状況をお客さんに示したところで、すぐに幕が閉まりました。
전염병(伝染病、最後のチャンス)
黒いコートを着て黒いハットを目深にかぶったシクトートが「무슨 일이시죠?」と言うのに毎回ドキッとするのですが、考えたら、歌ではなく「台詞」として話すのはこのシーンが最初だからというのもありますね。「그만 나가보세요.」と言ったあとは、すぐにまた 맥박이 と脈を測りながら歌い始めますから。
そして、意地悪な含み笑いを顔に浮かべながら、フランツの裏切りをエリザベートに告げ、エリザベートが「死にたい」と言うのを後ろを向いて待つシクトート。この、裏切りを告げるとき、シクトートは、舞台上手で客席の方を向いて立ったまま(エリザベートには背を向けて)話していますが、マチネで見たテクトートは、長椅子の背もたれ越しに、エリザベートのすぐ背中側から、エリザベートの耳元で話していたのでびっくりしました(そこがテクトートは妖怪っぽいというか)。
ハットを取り、エリザベートの言葉とともにマントを脱ぎ捨て振り返り、長椅子に駆け上るシクトート。これで、ようやくエリザベートは私のもとへ来てくれると思ったのでしょうが、意に反して、エリザベートはさらに決意を新たにして、自力で自由になろうとしてしまいます。
ブリッジで、ネックレスを投げつけられるシクトートの表情には、怒りと「なんなんだ」というちょっとした混乱が垣間見えます。
그림자는 길어지고(Reprise)(闇が広がる)
生真面目くんなルドルフが、陸橋の前で立ち止まって息を整えていると、双頭の鷲の紋章がせり上がっていき、襲う気まんまんのシクトートが正面を向いて立っています。
このルドルフは、真面目で頭が固いので、旧友(だと思い込まされている)が自分を裏切るなどとはまったく思っていない様子。
오, 난 널 잊은 적 없어.
내 친구 암흑속에서 나는 너를 찾곤했지~
と、親しげにシクトートに近づいていくと、シクトートは
내가 여기 왔어~!
とルドルフを抱きしめてあげます。男同士のハグそのものという感じで、このペアではユンルドとのときのような耽美さは感じられないのです。
そうして、一度、ルドルフに死の接吻をしようと目論むもあっさりかわされたので、搦手からいくことにしたトート。生真面目くんを陥れるのに絶好の機会を用意して、とにかく正義感を煽っていくスタイルでルドルフを革命の道に引きずりこみます。えげつない。
まんまとのせられてしまったルドルフを、シクトートは「あとは成り行きにまかせればいい」ぐらいの余裕のある態度で、陸橋の上からただ眺めています。ルドルフが宮廷に戻るときには、親しげに彼の肩をたたき、最後の一押しをしますが、すでにその気になっているルドルフには、そんな一押しもいらなかったようです。
ルドルフが父に見つかり、取り返しのつかないことになったことを知ったとき、ついにシクトートは笑い出し、陸橋の高みで勝ち誇ったようにのけぞって大笑いし続けます。この笑い方、本当に好きでした。
죽음의 춤(マイヤーリンク 死の舞踏)
チェ・ウヒョクさんのルドルフには、「お助けてくだされ、母上」という感じの時代劇っぽさがあります。歌詞はとても聞き取りやすいのですが、ユンルドのような弱々しさと可愛さはないので、お母さんにも見捨てられて絶望して自殺するユンルドとは違い、母に見捨てられて自分の名誉も保たれなくなったので、自殺するルドルフです。どちらかというと、切腹の方が似合う雰囲気。
中幕が上がると、舞台上手後方に現れるシクトートと死の天使たち。トートを真ん中に立て、回りを死の天使が美しく飾っているかのようです。銃を掲げた右手を3回続けて胸に引き寄せて、銃があることをルドルフに見せつけたあと、死の天使に渡して、ちょっとしたショーを始めます。
舞台下手に向かって歩いていき、客席側に向かってお辞儀をしてから、死の天使たちのジャンプに合わせてお手玉かジャグリングのように左手を動かして見せます。自分がこの状況を操っているということを見せつけるしぐさです。
ひとしきりルドルフを翻弄して遊んだあと、銃を受け取ったシクトートは、舞台中央で死の天使に担ぎ上げられると同時に、倒れ込んだルドルフを銃で狙います。ルドルフは四つん這いで客席側に逃げてこようとしますが、シクトートはその襟首を捕まえて、銃を軽く一回転させてから持ち直し、ルドルフに渡します。
左手はルドルフをつかんだまま、右手で客席の方へ手を広げて見せ、ルドルフに引き金を引くことを促し、曲が終わる瞬間、銃声とともに死の接吻。
静かに顔を上げ、ゆっくりと息を吐き出すシクトート。ルドルフを掴んでいた手を離すと、ルドルフはごろりと床に転がります。ルドルフを片付けるように、右手で死の天使たちに合図し、彼らがルドルフを担ぎにきたときには、「そんなものはもう見たくない」といった風に後ろを向いていますが、唇は拭いませんでした(今回は唇拭わないタイプのトートだということは冒頭からわかっていましたが、残念。最後に見たかった。)。
死の天使たちが去っていくと、ゆっくりと銃を拾い、銃口を見つめつつ舞台下手方向に歩みを進め、下手端で立ち止まります。そして、客席に向かって「これでショウはおしまいです」といったように丁寧にお辞儀をして去って行きました。(そうです、ショウはおしまいなのです(泣))
추도곡(死の嘆き)
エリザベートの嘆きようは凄まじく、フランツも慰めようがありません。
そんなエリザベートの元へ、苦悩の表情で現れるシクトート。自暴自棄になったエリザベートを迎えたかったわけではないというのがその顔に表れています。やはり、ルドルフはエリザベートではなく、「代わりのもの」を手に入れても、満足できなかった様子。
エリザベートの懇願を聞くにつれ、険しい表情になり、ついには拒否するシクトートの姿には、悲しみも感じられます。これほど人間的な感情に振り回されることは初めてで、何もかも思い通りにならないもどかしさもあるのでしょう。ただ、エリザベートの愛がほしいだけなのに。
질문들은 던져졌다(Reprise)(悪夢、暗殺)
シクトートのフランツへの怒りは最高潮へ。
悪夢の中でも最悪の悪夢を見せるトート。エリザベートへの愛をフランツに直球でぶつけるシクトートには、「我慢の限界」を感じます。
헤이 루케니! 지금이야!
とルキーニにナイフを投げるのを見るのも最後だと思うと私の方がこみ上げてくるものがあり、あまり冷静に見て入られません。
베일은 떨어지고(愛のテーマ)
ルキーニに刺され、倒れるエリザベート。
純白の衣装をまとって静かに現れ、ブリッジの袂で右手を静かに差し出しエリザベートを迎えるシクトート。結局は、「生きている」エリザベートには愛されなかったわけですが、彼女に本当の自由をあげられたことで、トートの愛を示したことに。
どちらかというとエリザベートの方から、キスしにいっているのは、エリザベートが自分で自由を選んだということだからでしょうか。
愛しいエリザベートを右手で支えながら、左手には悲しみを握りしめ、ゆっくりと顔を上げて天空を見つめるシクトートです。
カーテンコール
終わっちゃった(;o;)
トートダンサーズのカテコに続いて、ブリッジから駆け下りてくるシクトート。文字通り、拍手喝采です。最後の「最後のダンス」。
우리 둘이
で、一呼吸どころか、拍手と歓声が止みません。泣きそうになりますが、あまりにも拍手と歓声が止まないので、最後はちょっと笑ってしまってからの・・・
서~~~‼︎
です。胸いっぱいすぎです。
全員で出てきてのプロローグリプライズ。엘리자벳! 엘리자벳!で上手を向いていた全員が客席側に振り向いた瞬間のカッコよさ。
手に穴が開くんじゃないかというほど拍手しました。全員で手を繋いでのお辞儀、両手でのバイバイ。投げキッスとか。カテコ途中で出てる場合じゃないです。役者は板の上にいるときが一番カッコいい、と私などは思うのです。