2018年12月2日マチネ 14:00開演

エリザベート:キム・ソヒョン
トート:パク・ヒョンシク
ルキーニ:パク・カンヒョン
フランツ:ソン・ジュンホ
ルドルフ:ユン・ソホ
ゾフィー:イ・テウォン
(敬称略)


開場から着席

日本の劇場では、劇場自体の入口にてチケットを渡すのが普通ですが、BLUE SQUAREでは、座席近くの扉でチケットを渡します。

そして、今回の舞台は特に撮影録音が厳しく禁じられていて、係の方がチケットをもぎるときにそのようなことを言われました。実際には、何と言ったか分からなかったので、「No photos?」ととっさにきいてしまったところ、「Yes, yes」と言われました。

韓国に行く前に知っておきたかった韓国語が、先に座席に座ってる人の前を通る時に言う「すみません」にあたる言葉。残念ながら調べがつかなかったのですが、私が言う状況にはならず。ソワレで、女の子が”잠시만요~”と言っているのをきいて、「なるほど」と。これはけっこう言う場面が多く、たとえば飛行機で窓側に座った場合トイレに行く時にもつかえそうです。

マチネは、下手ブロック6列目のセンター寄り。舞台と1列目の間にはオーケストラピットがあるので、思ったよりは、舞台と客席の間があります。そして、客席の段差は少ないです。斜め前のおじさんの頭がけっこう邪魔でした。

今回失敗したのは、日常生活用の度数のコンタクトレンズしか持っていかなかったこと。もちろん
オペラグラス(Saqras)は持っていきましたが、もう少し目が見えれば、オペラを使わなくても済んだ場面が多々あり、次回は絶対度の強いレンズを持っていくと決意したのでした。特にトートは、舞台奥や舞台上などにいることが多く「死」だから照明も暗い(笑)

全体的な感想

本当に素晴らしかった!!
圧巻です。

韓国まで来て本当に良かった!!!
と終演直後にしみじみ思いました。

まず、無舞台装置がすごい。回転舞台によって、舞台の手前から奥まで縦横無尽にセットが動くし(それに合わせて役者も動く)、セットが下から出てきて、沈みながら消えていく。回転する舞台装置以外にも、鉄橋(みたいなもの)が伸縮自在に中空に現れるし、宙に浮いたように見える高台の装置が下手上方に現れたり、上空を飛ぶようなロープがあったりと、舞台空間の中で使っていな
い場所がまったくないほど。

そして、オーケストラの安定感ある演奏が素晴らしかったのはもちろん、役者陣で歌があやしい人がいない。当たりまえっちゃ当たり前ですが、歌に期待できないミュージカルをけっこう見ているもので。こんなにも歌で心配しないミュージカルは久しぶりでした(笑)日本でも、高いお金を払うのだから、これぐらい聴かせてほしいよ。

映像と照明の巧みな切り替えも見事でした。目まぐるしく場面が変わる舞台ですが、今がいつなのかどこなのか、どういう状況なのか、照明の効果は高かったです。

圧倒されっぱなしであっという間に終わってました。韓国では、それぞれの役の歌やパフォーマンスが良ければ、その場で惜しみない拍手と歓声が送られるので、盛り上がる箇所がたくさん!日本でもあのくらい盛り上がった方が、演ってる方もうれしいのではないかと思いました。メインのカーテンコールで、すぐにスタンディングオベイションなのもわかりやすくて好きです。

プロローグから愛と死の輪舞

ルキーニが(死後の世界で)裁判官に問い詰められているシーンから始まりますが、一気に世界がエリザベートの中に引き込まれて、ゾクゾクしました。ルキーニがかなりお若いかもと思いましたが、軽妙な語り口で心地よい歌声。フットワークが軽く、いつのまにかあちこちに移動してる感じ。

そして、亡霊として現れるエリザベート以外の人たち。エリザベートの肖像画には蜘蛛の巣が。プロローグ。

上手から鉄橋がゆっくり降りてきて、トート登場。これを見るために来た!と思ったものの、現実じゃないみたい。なんかこう、画面でしか見てなかった人を生で観ても、「ほんとに生きてる人間なのかしら?」と思いませんか?まして、「死」ですし。そんな感じで、正直マチネは夢の中のできごとだったみたいです。

シシィがサーカス小屋の綱渡りの綱から落ちて、初めてトートに会うシーン。トートがシシィをお姫様抱っこして奥からそっと歩いてくるのですが思わず奥歯を噛みしめてこぶしを握ってしまうほどカッコいい(舞台が回転するのがまた良い)。♬「모두 반가워요」 「愛と死の輪舞」に当たるのかな。シシィに魅せられ、そんな自分にちょっと戸惑うシクトート。恐ろしい死のはずなのにちょっと愛おしい。ここでもうたぶん、がっつりトートに魅了される人が多いんじゃないかと。まっすぐにトートをみつめて語りかけてくる光り輝く少女に完全にやられた感あります。そして、そのまま静かに去っていくトート。

私の息が止まってて、危うかった(汗)

신이시여 지키소서 우리 젊은 황제(皇帝の義務)

ここでは、息子を処刑されそうな母親が、皇帝とゾフィーに命乞いをするのですが、その奥の高いところにこちらを向いて男が跪いており、その後ろにトートが立っています。ゾフィーの一言ずつで、トートは黒い羽根(マント。これが超美麗!)を徐々に広げて行き、広げ終わった瞬間!死のキスととともに男は処刑されます。

トートは一言も話さないシーンですが、暗いし怖いし、シルエットが完璧だしで、もう最高です♡

結婚式

エリザベートとフランツの結婚式。誓いの言葉に答えたエリザベートの声が木霊し、教会に陰がさした直後、高らかな笑い声を上げながら、上空を飛び回るトート(片手でロープを握ってスマートにロープに立ち、飛び回るさまはシルクドソレイユ)。なんだかもう2次元で見ているような完璧なビジュアル。あれが3次元でいいんでしょうか。

私にとって、役者の「声」が好きかどうかというのが、とても大きな比重を占めていまして、日本のミュージカル俳優さんで大人気の人だったとしても、どうしても声が自分に合わなくて、耳がくすぐったくて、カッコいいとあまり思えないというのがあります。これは例えば語学教材なんかにも当てはまるのですが、声をずっと、何度も聞いていられるかどうかで、その教材を続けるかどうかが決まってしまいます。現在の仕事でも、音声編集をかなりの数やっていまして、合わない声の場合は苦痛でしかたありません。

それはまあ別として、とにかく、ヒョンシクさんの声はドラマで聴いていて本当に良い声だなあと思っていて、ZE:Aだけでなくソロの曲も聴きまくっていたのですが、トートとしての歌い方も声の出し方も、本当に良くて、ぜひとも音源を発売して欲しいほどです!特に、今まで高音で歌うことが多かったように思うのですが、トートの低音がもう、シビレます(死語)。公開稽古の「最後のダンス」などでは、まだ「がんばってる」感がありましたが、本番では、そういう必死感はなく、ただそこにトートとして在りました。

마지막 춤(最後のダンス)

その♬「마지막 춤(最後のダンス)」です。
最後のダンスは、トートも舞台前方に出てきて、超かっこいいダンスをトートダンサーと共に踊ります。これは、トートによって振り付けが違うようです。公開稽古映像で見たレオさんの振りとは違っていました。シクトートの場合は、指を膝近くでスナップさせて鳴らすようなしぐさをしながらステップを踏むところがあり、ちょっと『West Side Story』の「Cool」に出てくる振りに似た感じのところがありました。

私のミュージカル好きの原点が『West Side Story』で、いつ見ても胸踊る映画なので、見た瞬間「おお!?!」と。全く関係ないとは思いますが振付家の方はもちろんこのミュージカルもご存知でしょう。これが目の前でくり広げられたので、危うく私の最後が来るところでした。

トートダンサー

トートダンサーと言えば私の中では東山義久なんですけど(実際に見てはいませんが)、今回のカンパニーのトートダンサー陣、凄いです!持久力もハンパないと思うんですが、トートに寄り添うように、トートの一部が出てきたみたいな動きをするのです。トート以上に出ずっぱりですし、なんならエリザベートぐらい出ずっぱりなのでは。縦横無尽に動きまくり、妖しさを十二分に醸し出しています。

知ってるダンサーさんに良く似た踊りをする方がいて、その方に見惚れてたら、シクトートが出てくるところを見逃したほどです(汗)

エリザベート、ゾフィー、そしてフランツ

ソン・ジュンホさんは、Fantastic Musical Concertで初めて拝見しましたが、フランツと聞いてもうピッタリと思いました。フランツっぽい(どんなだ 笑)この日のエリザベート、キム・ソヒョンさんとは実際にご夫婦ということで、息もピッタリ。(エリザベートとフランツは息が合わずに分かれますが(笑))

エリザベートに子供が産まれたものの、ゾフィーに取り上げられて、勝手に名前もつけられ、子育てさせてもらえなかったり、フランツがゾフィーの言いなりだったりする数年間の出来事が、ルキーニによって語られるのですが、人形劇のようになっていて、皆、腕に紐というか糸を着けていて、それを上方にいるトートダンサーたちが操っています。これは面白いなあ!と思いました。

그림자는 길어지고(闇が広がる)

エリザベートの娘が亡くなり、嘆き悲しんでいるところに現れるトート(下手上方の高いところに)。エリザベートに責められながら、静かに歌い出す♬그림자는 길어지고。静かに、深く、低い声で歌いだすのです。

そして、ひとりになって世界に向かって歌い上げた瞬間、本当に暗雲が立ち込める様子が目に浮かぶようでした。

キム・ソヒョンさんがエリザベートのこの回では、エリザベートの周りから希望をなくしていって、最後に自分のところに続く道だけを残して、こちらに来させようとしてる感じがすごくしました。すごく陰湿な感じ(笑)これがオク・ジュヒョンさんとの回とはまったく違ったのです。相手役とのケミストリーで、全然違う色を出してくるのだから凄いことです。ひょっとすると、本人さえ、相手役によって自分がそこまで変わってるとは思っていないかもしれません。

엘리자벳, 문을 열어주오(エリザベート、扉を開けておくれ)

ここの日本語の曲名がよく分からないのですが。とにかく、エリザベートがフランツに最後通告の手紙を渡し、扉越しに、ひとりにしてくれと言う場面。

甘い誘惑の声でエリザベートの名を呼びながら、ベッドに座った状態でトートが現れます。(片膝立てて、片足は伸ばしていて、立ててる膝に腕をのせてます。ベッドになだれ込む気まんまんです。)これが回転舞台で現れる感じが、なんというか、とてもエロい!!エロすぎます。や、それ、拒むの無理でしょう。

しかし当然ながら、エリザベートに拒まれるトート。この時のシクトートの、「くっそ!あと少しだったのに!」的な悔しそうな顔ときたら!意外すぎてびっくりです。ここもトートによって全然表現が違うんですね。

나는 나만의 것(Reprise)(私だけに)

一幕最後は三重奏。トートは鏡の中(?)みたいな大きな額縁の後ろにいます。怪しさ満点です。この三重奏できれいなハーモニーが聴ける幸せを噛みしめていました。

一幕までで長くなりすぎたので、二幕はまた次回にします。