今回の旅の最後は、『ファンレター』ソワレです。好きな役者さんが、土日で全然別の作品に出るのを観られるとは、旅行者には嬉しいですが、演る方は大変そうです。でも、ヒョンシクさんと同い年のユン・ソホくんは、年末にはお国の義務を果たしに行ってしまうので(泣)、今回2作品が観られて本当に良かったです。

全然関係ないですが、マチネを낮공、ソワレを밤공というのは最近覚えました(笑)マチネとソワレ自体、舞台に行く人にしか通じないとは思いますが。ユン・ソホくんの退勤挨拶の時に낮공と言っていたので、「おお!早速ちゃんとした発音を聴けた!」と、ささやかすぎる韓国語の確認をしていたのでした。

斗山アートセンターヨンガンホール(두산아트센터 연강홀)

再び。ですが、マチネ後、コーヒーを飲みながらケーキを食べたくて、土砂降りの中、近くのA TWOSOME PLACEに。マチネが16:45頃に終わり、ソワレが18時からで、ロビーピアノコンサートも聴きたかったので、休憩時間は20分ぐらいしかありません。ヘーゼルナッツマスカルポーネチーズケーキとアメリカーノを注文しましたが、どちらも2時間ぐらいかけないと食べきれ(飲みきれ)ない量で、完食は無理でした(泣)

ヨンガンホールロビーでは、マチネで聴いたばかりの曲をピアノ演奏で聴くことができました。動画もOKでしたが、撮影も録音もしないで、少し離れたところから楽しむことに。

物販(MD)

マチネ編で書き忘れましたが、まだプログラムなどはなく、欲しかった原稿用紙マスキングテープも、行った時には売り切れていて、来週以降にならないと入荷しないとのことで、特に買いたいものがありませんでした。その後発売された原稿用紙ノートも欲しかった!

公演チラシ

というわけで、お土産になる紙ものがなくて残念だったのですが、前日夜に『レベッカ』を観に行った忠武アートセンターに、『ファンレター』の公演チラシが置いてあるのを発見!誰もそれを見ていませんでしたが、ひとりチラシを手に感動に打ち震えておりました。今まで韓国で、観たい舞台のチラシをもらえたことがなかったので…。このチラシのソホセフンがあまりにも可愛いくてですね。

反対に、斗山アートセンターでは『レベッカ』のチラシを手に入れました。仲良くしているアートセンター同士なのかもしれません。(同じ系列でしょうか?よく分かりませんが場所も近いです。)

キャスト

김해진:김재범(キム・ジェボム)
정세훈:윤소호(ユン・ソホ)
히카루:김수연(キム・スヨン)
이윤:정민
이태준:양승리
김수남:이승현
김환태:권동호
(敬称略)

前日には『ランボー』でベルレーヌとランボーだった二人です(笑)ペンで書くことで創作活動をしている人たち(詩人と作家)、大人と17歳という年齢差、手紙によってつながる関係、病んでる大人、実はもっと病んでる子ども・・・などと書くととても似ている2つの作品ですが、全然違います(笑)

この撮影スポットが凝っていてとても素敵です。思わずいろんな角度から写真に撮りたくなります。

あらすじ(ネタばれあり)

舞台は、1930年代。日本統治下にあった朝鮮。実在した「九人会」という若手作家の集まりをモチーフとした「七人会」に所属する作家キム・ヘジンと、彼に憧れてファンレターを書く作家志望の高校生チョン・セフンを中心とした物語。

チョン・セフンは、喫茶店で休んでいたところ、正体不明の作家「ヒカル」の作品が発売されるという噂を耳にする。慌てるセフン。それをやめさせようと、その発信元である作家イ・ユンの元を訪ねる。イ・ユンは、言論統制により刑務所に入れられていた。久しぶりに会ったセフンに、なぜヒカルの作品を出版してはいけないのか、理由を尋ねる。最初は真実を話すことを拒んでいたセフンだが、やがて、その口からゆっくりと真実が語られる・・・。

文学好きで作家になりたい高校生のセフンは、名家の息子で日本に留学させられていたが、勝手に帰国する。そんなセフンの希望となっていたのが、作家キム・ヘジンの小説だった。ヘジン先生の作品が大好きすぎて、ファンレターを書くことにしたセフンは、そのファンレターの送り主を「ヒカル」という女性として出した。

厳格な父と喧嘩して家出したセフンは、「七人会」で掃除や雑用を行う仕事を始める。セフンは、憧れのヘジン先生と初めて対面し、感動し感激する。ヘジン先生からものを頼まれるだけで有頂天になるセフンだったが、ヘジン先生が、ファンレターをくれた「ヒカル」を、自分のことを分かってくれる唯一の女性で「ミューズ(女神)」だと心酔しており、結婚まで考えていることを知り驚愕する。慌てて、紙で手を切ったセフンの指にヨードチンキ(的なもの)を塗ってくれる優しいヘジン先生を前に、自分がヒカルだとは言い出せなくなってしまう。

そんなある日、ヒカルからの手紙が来ないことにやさぐれているヘジン。イ・ユンは、ヘジンがなんかした(書いた)んじゃないかとおちょくるが、ヘジンは、そんなことはないと、新たに書いた手紙を出しに行こうとする。イ・ユンはヘジンを夕食に誘って共に出て行き、手紙をセフンに任せる。

預かった手紙を見たセフンは衝撃を受ける。そこには血で書いた文字があり、それは血書だったからだ。セフンは、ヒカルは自分だと打ち明ける手紙を書こうとするが、うまくいかない。それどころか、ヒカルとはどういう人物なのか、背景の肉付けを重ねてゆく。そうして、ヒカルにさらに惹かれるヘジン先生が、ヒカルへの執着を増すほどに、ヒカルという架空の女性が一人歩きをし始める。ヒカルは、ヘジン先生を励まし、奮い立たせ、最高傑作を書くのを煽るようになっていく。ヒカルもまた、ヘジン先生と約束して作品を綴っていく。『アベラールとエロイーズの書簡』のように、お互いにやりとりした手紙が作品になっていくのだ。そのヒカルが書いた作品は雑誌(新聞?)に載り、正体不明の女性作家の凄い作品だと、たちまち話題となる。

そんなある日、七人会について警察に密告があり、仲間らは作品を焼いてしまわざるを得なくなる。誰が密告したのか。疑われるセフンだが、疑いは一応晴れる。次に疑われたのは、ヘジンと手紙のやり取りを頻繁にしているヒカルだった。あくまでもヒカルをかばうヘジンは七人会を去ることになる。イ・ユンは、かねてより「ヒカル」はセフンではないかと疑っていたが、セフンの筆跡がヒカルの手紙のものとは異なったため、その場では納得したような振りをする。

独りで執筆活動を続けるヘジン。ヘジンを孤独に追いやった者は、他でもないヒカルだった。結核で今にも死にそうになりながらも、執筆を続けるヘジン。心の支えはヒカルただひとり。

ヘジン先生を追い詰める、その命さえ危うくしようとしているのが、自分の右手が生み出してしまったもう一人の自分「ヒカル」であることに、ようやく向き合ったセフンは、自分の右手を鉛筆で刺す。そうすることで、ヒカルを殺したのだ。そうして、倒れて気を失っていたヘジン先生が目覚めたとき、「自分がヒカルだった」と真実を話す。しかし、ヘジンはそれを受け入れず「なぜ打ち明けたのか」とセフンを責め、セフンを追い返す。やがて、ヘジンは結核で亡くなる。

全てをセフンの口から聞いたイ・ユンは、ヘジンの最後の手紙の場所をセフンに告げる。ヒカルがセフンだと気づいていたものの、大の親友だったヘジンを騙したセフンを許せなかったが、ヘジンに頼まれた大切な伝言だった。セフンは、イ・ユンに言われた場所で手紙を見つける。そこには、ヘジン先生の最後の告白が書かれていた。

ようやく赦しを得たセフンは、七人会の一員となり、新たな一歩を踏み出す。ヘジン先生の思い出と「ヒカル」と共に。

※私の想像で補われた部分がかなりあり。作家たちが文学についてあれこれ語っているところは背景知識もないため全く分からず(汗)「アベラールとエロイーズ」も、聞こえた名前を検索して知りました。

感想

やはりジェボムさんのヘジン先生は、こう、ヒトでないものに魅入られて、命を削って削って創作に打ち込み、最後は消えてしまう。そんな感じがすごくしました。真実を打ち明けられて、セフンの襟元をつかんで突き放す時、殴りたいのを懸命に堪えているような。分かっていたこととは言え、最期の瞬間までヒカルにすがりたかったのに、という哀しみと悔しさと、でもセフンのことも憎みきれない複雑な感情が、その手に集約されていて。その手を見たから、最後の告白の手紙で号泣してしまうのです。

ユン・ソホくんのセフンは、もう本当に子どもの高校生にしか見えません。本当の高校生ではできない役ですが、ぽやんとした子どもらしさが、ぽけっと開いた口で表されています(笑)才能があるがために厨二病が炸裂して歯止めがきかなくなった感ありありです。ヘジン先生に初めて会ったときの、もうヘジン先生しか見えない感じ。とりあえず手に持ってみた紙とかもう持ってること忘れてるよね、状態(笑)ヒョンフンさんのセフンが、ヘジン先生を尊敬して慕っているという感じなのに対して、ソホくんのセフンはヘジン先生の超「ファン」。

だから余計に「ヒカル」がセフンの中の暴走する一面という感じがすごくしました。ヘジン先生が「ヒカルと結婚するかも」とまで想っていることを知った瞬間の「ええ?!?」という言い方がとてもとてもとても可愛いです。目もキラキラしちゃって、慌てふためく様子も。

それにしても「ヒカル」という暴走する別人格を持つセフン。よくよく考えると怖すぎます(笑)二重人格とも違う、とても不思議なキャラクターの存在です。そこが面白いのですが。そしてさらに同じぐらい怖いのは、血書など書いてしまうヘジン先生。愛が重すぎます。血で書くとか。最初は「혈서って?え?」と思いました。Google翻訳でも血書と出るし、ソホセフンは「血」と言ってたしで、怖っ!と。この後に歌う「거짓말이 아니야〜♪」という曲はとても耳に残ります。

ヘジン先生の最後の手紙を読むセフンは、号泣しすぎて、毎回あれでは消耗激しそうですし、涙と鼻水で大変そうです(汗)号泣した後、すぐにスピーチして歌わないといけないという、超難度の高い演出ですし。あれは目も腫れます。

キム・スヨンさんのヒカルは、セフンに刺されてからの弱々しい陽炎のような姿が印象的でした。そんなヒカルが、ヘジン先生に促されて、セフンに寄り添い穏やかな表情になる姿に泣きました。そもそもは、大好きなヘジン先生に「好き」という気持ちを伝えるためだけにいた存在であり、悪いモノではなかったんだ、良かったね!という気持ちになるのです。

また、音楽がとても良いです。どの楽曲もモダンレトロな雰囲気を醸し出しながらも、古臭くはなく、次の曲が楽しみになる心地良さで。歌と台詞とのバランスも絶妙で、「そこで歌う意味」がある。

本当に良い作品を見ることができましたし、一日中『ファンレター』の世界に浸ることができて幸せでした。

カーテンコール

カーテンコールは撮影OKでした。11列目のセンターブロック上手通路席だったので遠いですが。

YouTube関連動画

ユン・ソホくんの出ている映像は、公開稽古の時のものですが、これを見るだけでも舞台が思い出されます。