平日、金曜日のマチネがあったので、観に行くことができたのが、ミュージカル『マリー・アントワネット〈마리 앙투아네트〉』です。順番としては、今回の2019年9月5日夜からの3泊4日の旅の中で最初に観ました。しかも平日マチネということで割引もあり、かなりお得に観ることがでいました。

この金曜日は、午前中既に山登りでだいぶヘロヘロに(「ソウル編:ドラマ『力の強い女 ト・ボンスン(힘쎈여자 도봉순)』梨花洞壁画村(이화벽화마을)ロケ地巡り」。昼ごはんを食べる暇もなく恵化駅から移動して、開場時間ギリギリになってしまいました。

Dキューブアートセンター(디큐브아트센터)

Dキューブアートセンターは、地下鉄1号線、2号線の新道林駅(신도림역)直結です。5番出口を出ると、方向案内もありますし、上演中の演目のデジタルポスターがあちこちにあるので、場所は分かりやすいです。

ただ、 Dキューブアートセンターは、Dキューブシティビルの7階にあるのですが、地下7階まである駐車場と直結のエレベーターになる上、7階に行くエレベーターが3台しかないので、なかなか来ません。しかもベビーカーが多かったりすると普通の徒歩の人が後になるため、時間がかかります。平日昼間でこんなに時間がかかるのですから、土日などの休日はもっと大変そうです。時間に余裕を持って行くことをお勧めします。ロビーにはカフェなどもありますし。

また、これは帰りにも同じことが言えまして、下に下りるエレベーターが全然来ない!下りるまで20分ぐらいかかったので、次の予定を詰め詰めにしない方がいいです。

映画館も一緒になってるので、映画を見る場合も時間に余裕を持って行った方が良いです。7階では、その映画館のコンセッションも利用できますし、1階エスカレーターで上がった8階(劇場の客席1階)にもカフェがあり、テーブル席がいくつかあるほか、カウンター席がたくさんあります。

物販は、この8階のほか、2階客席階にもありました。キャストボードも両方にありましたが、花で飾られたロゴのボードは、カフェもある1階客席階のみに設置されていました。

チケットの引き換えは7階のチケットカウンターで行います。今まで、インターパークのようにパスポートの提示を求められるところと、何も聞かれないところがありましたが、ここでは初めて「電話番号」を聞かれました。「전화 번호」を実践で初めて聞きました(笑)テキストだとゆっくりはっきり発音してくれるじゃないですか。言われたままに「전화 번호…」と繰り返して考えても、分からんものは分かりません。受付の人も「네,전화 번호.」と繰り返して待っていましたが、分かっていないことが分かったらしく、Phone numberと言い直してくれました(笑)私は英語で答えました(笑)

いつも思いますが、チケットのデザインが凝っていて、とても記念になるのですよ。地方公演の時は、チケット販売サイトの味気ない紙ですが、ソウルのメイン劇場での公演の場合は、エリザベートもアンナカレーニナもエクスカリバーも、皆、保存しておきたくなるデザインでした。この「マリー・アントワネット」も、ピンクのお花をあしらった素敵なデザインでした。しかしながら、チケットの半券の綺麗な方は持っていかれてしまうのだと気づいて、慌てて写真を撮ったのでした。

キャスト

2019年9月6日(金) 15:00開演

マリー・アントワネット:キム・ソヒョン
マルグリット・アルノー:チャン・ウナ
フェルセン伯爵:パク・ガンヒョン
ルイ16世:イ・ハンミル
レオナール:ムン・ソンヒョク
ローズ・ベルタン:ジョア
ジャック・エベール:ユン・ソンヨン
オルレアン公:ミン・ヨンギ
(敬称略)

女性が主役の大作で、主役ばかりを演じ続けているキム・ソヒョンさん。エリザベート 、アンナ・カレーニナに続いて、マリー・アントワネットです。今年、これを全て観ている自分も、なんだか信じられませんが(笑)

『エクスカリバー』はカイさんで観たので、エリザベートのルキーニ以来のパク・ガンヒョンさん。ルキーニからのフェルセンってギャップありすぎです。そしてさらに、エリザベートではフランツだったミン・ヨンギさん。アンナ・カレーニナでは観られなかったので、フランツからのオルレアン公です。他の方々は、おそらく初めてです。

開場から着席

今回は、VIP席ではなく、その下のR席でもなく、初めてのS席で(日本とは異なり、韓国の5席は 上から3番目ぐらいに安い席です)、さらに平日マチネ割引があったので、90000ウォンのチケットを80000ウォンで購入できました。Melon Ticketで購入しましたが、割引はMelonでしかやっていなかったかもしれません。他の公演でもInterparkでは割引が表示 されないがMelonでは表示されることがあるので、チケットは複数のサイトで見てみることを おススメします。

S席とはいえR席のすぐ後ろ、2階のS席の中では最前列です。上手ブロックセンター寄りの通路席だったため、前を遮るものはなく、舞台もかなりちゃんと見えて、とても快滴でした。「推しを間近で観たい!」というのでなければ、音響も良く、6倍のオペラグラスで十分に堪能できました。近さ的には帝劇のA席最前列ぐらいでしょうか。見やすさと聞きやすさはDキューブアートセンターの方が上ですね。

全体的な感想

事前に歌の予習もしていかなかったので少し心配でしたが、ミヒャエル・クンツェとシルヴェスター・リーヴァイコンビですし、音楽監督も『エリザベート』のキム・ムンジョンなので、その世界観にはすぐに馴染みました。

衣装とセットが、また豪華絢爛で、いったいいくらかかってるんだろうと心配になるほど(笑)贅沢三昧の宮殿とマリー・アントワネットの様子を描くのですから大変です。マルグリットを始めとする民衆の貧乏さとの対比がすごいです。

マリーのキム・ソヒョンさんは、考えてみると、エリザベート→アンナ・カレーニナ→マリー・アントワネットと、金持ちで自分勝手な女続きです(笑)似たような女の人が続いたので、若干歌い方に飽きてきたかもと思ったのですが、マリーが後半、弾劾されて裁判にかけられ、子供と引き離されるあたりの演技が凄まじく、特に裁判にかけられているところと、子供を取られたところは、ソヒョンさんの真髄を見た気がしました。

パク・ガンヒョンさんは、ビジュアル的に私の想像するフェルセンとは違うのですが、歌の上手さと演技力で、一途だけれど聡明かつ冷静なフェルセンを好演していました。

ストーリー

私のマリー・アントワネットに関する知識と言えば『ベルサイユのばら』しかないのですが、このおかげで、なんの話なのか、誰が誰でどういう役割なのかが、ミュージカル初見で韓国語がおぼつかないことこの上なくても分かりました。

要するに「首飾り事件」がメインのストーリーです。豪華なダイヤモンドの首飾りが、マリーを騙った者に騙し取られたのをきっかけとして、フランス王室が崩壊し、マリーがギロチンにかけられるまでを描いています。

そこに、民衆側の代表としてマルグリットがいるという感じです。「ベルサイユのばら」では、ジャンヌという性悪女がどこかからか見つけてきたマリー・アントワネットそっくりな女が、マリーのフリをしますが、そのマリーのフリをする役割をマルグリットが担います。

ちなみに初演は日本です。EMKと東宝はよく相互に初演のミュージカルをやりますね。「笑う男」などは韓国で初演した後日本で上演されましたし。

第一幕

フェルセンが、マリーの処刑が実行されたことを知らせる手紙を受け取るところから始まります。二階建てになった屋敷内の部屋のセットの2階に立っていたので、2階席からもよく見えました。プレスコールの動画がちょうどあるので、実際にどんな感じか見ることができます。

これを改めて見ても、パク・ガンヒョンさんはフェルセンという感じがしないのですよね…。フェルセン役クワトロキャストの中では、ビジュアル的にはファン・ミンヒョンさんが一番しっくりくるような気がしました。ソン・ジュノさんはフェルセンというには貫禄あり過ぎる気がしますし、レオくんは目が鋭いので何か企んでそうに見えてしまう(笑)

ビジュアルがフェルセンぽくないというのはともかく、パク・ガンヒョンさんの歌は胸にきます。歌い出すと切なくなる。国王という人がいるマリーに、大っぴらには愛を表せずにいるものの、いつも天真爛漫すぎるマリーのことを心配していて。

そんなマリーは、豪華なパーティ三昧。ファッションも常に最新の変わったデザインのものをオーダー。このデザイナーとヘアドレッサーがまた、マリーの浪費癖をこれ幸いと、高価なドレスやカツラを次々と売りつけます。この辺りのシーンが眩しいほどに豪華です。

その前に、パーティの場に突如乱入してくるマルグリット。ここで、なぜマルグリットが突然現れたのか、いまいちよく分からなかったのですが、とにかく食べるのにも困っている貧しい人たちのことを訴えて、貴族たちを非難しています。そこで、マリーと直接対面して、マルグリットはマリーを憎み出したようです。

一幕はほとんど、人物紹介や、その時代背景を見せること、貴族と民衆の貧富の差の描写、そして、事件の発端となる首飾りの登場までで、物語が大きく動き出すのは二幕からです。

実のところ、平日の昼間の2階席ということもあり、1階はそこそこ盛り上がっていましたが2階は人も少なく、ちょっと寂しいほど静かで。私の隣は男性一人で来ていましたが、その横からずっと空席だったので、幕が上がってから、私との間を一つ空けた席に移動していました。ガラガラなのにくっついて観るのも・・・という感じだったので(笑)そんな風に人がいなかったので、幕間にトイレに行くのも余裕でした。

第二幕

二幕は首飾り事件が動き出し、物語として、俄然面白くなります!

策士で、自分が王になりたいオルレアン公と、その仲間のジャック・エベールは、マルグリットと知り合います。

マリーがダイヤモンドの首飾りを欲しがっていたことと、ローアン大司教がマリー・アントワネットを密かに想っていたことを利用して、マルグリットにマリーと同じ格好をさせて(これにデザイナーとヘアードレッサーが加担する)、嘘の密会を作り出し、ローアン大司教に代金を代わりに仮払いさせて、まんまと首飾りを騙し取るのです。

や、マルグリットとマリー、全く似てないですけど、ローアン大司教は間近でマリーも見たことがあるのになぜ見抜けないのですかね(笑)

ところが、いつになっても借金を返してくれないマリー・アントワネットに宛てて、借金取立ての手紙が届き、それを国王も読みますが、二人とも心当たりがないため、それを放っておきます(漫画ではこの手紙を燃やしてしまっていたかと)。この借金問題から、事件が発覚し、事件に関わった者たちが裁判にかけられることになります。民衆たちの怒りは、真実を求めるよりも、王室そのものに向けられ、怒り狂った民衆は王宮に押し寄せて行きます。

王家の人たちを逃がそうと、奔走するフェルセン。途中で、国王から「もうここまでで良い」と別れを告げられたフェルセンの、苦悩と悲しみは、その顔を見ていられなくなるほどです。

そして、とうとう検問で王家の者たちであることがバレてしまい、全員牢獄に入れられます。もちろん愛する子供たちも。その牢獄で王家の世話をするのがマルグリットです。

このミュージカルでは、マルグリットは、フェルセンに助けてもらったことがあり、顔見知りです。国王の夫がいながらフェルセンともよろしくやってるマリーのことが、どうにも許せなくて、その気持ちも革命の原動力となっていました。マリーとマルグリットの掛け合いの歌は、デュエットというより歌による戦いです。

しかしながら、早々に国王がギロチンにかけられ、王子と無理やり引き離されて、狂ったように嘆き悲しむマリーを見ているうちに、自分が望んでいた革命とはこういうものだったのだろうか、という疑問を抱き始めます。

キム・ソヒョンさん、実際にお子さんがいらっしゃるからか、エリザベートの時も思いましたが、子を失った時の嘆き方が半端ないです。こちらの胸も引き裂かれそうになります。そして、そのような精神状態で、真っ白なだけのみすぼらしい格好で裁判に臨むのですが、ジッと一点を見据えて黙って耐えている様子が、本当に凄い!スポットライトが当たっているのに、マリーの周囲が真っ暗な闇に見えて、大丈夫なのか心配になるほど。

その様子をずっと見てきたマルグリットは、オルレアン公に強要された証言ではなく、真実を述べ始めるのです。

結局、マリー・アントワネットはギロチンにかけられますが、最後に手を差し伸べたのはあのマルグリット。オルレアン公の一味も捕らえられ、後に処刑されたんだろうなと思わせます。

このオルレアン公は、ミン・ヨンギさんですが、オルレアン公のリサイタルかと思われるほど、オルレアン公の歌の時にはものすごい盛り上がりを見せていました。実際、一幕で大拍手が起こったのはオルレアン公の歌だけで、他は普通の拍手だったのです。二幕は、その後半のマリーやマルグリットの歌、切ないフェルセンの歌などでも拍手喝采になったので、お客さんも二幕でようやく温まってきたのでしょう。

場面は一幕冒頭に戻り、マリーの処刑を知ったフェルセンは、今すぐそばに行って抱きしめてあげます!(キモい)というくらい可哀想でした(泣)

カーテンコール

カーテンコールではもちろん、ドレスになって再登場のマリーです。思わずスタンディングオベーションしていた私ですが、2階で立ち上がった人がいなくて、2階は立ち上がっちゃいけない規則なのかと心配になってしまいました(汗)でも、係員の方がすぐそばにいて、何も言われませんでしたので、2階の人たちはクールだったということで(笑)めっちゃ拍手はしていたのですがね。

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